原始的なアップルのデモ

こうした具体的なデモが相次いだフェイスブックやグーグルに対して、アップルのデモは非常に原始的なものだった。WWDC 2017のハンズオンエリアで行われていたデモを以下のビデオにまとめているので参照して欲しい。

ARKitのデモで用いていたのは、同日に発表されたiPad Pro 12.9インチモデルだ。最新のA10X Fusionプロセッサを搭載しているが、カメラはiPhone 7と同じ1200万画素のセンサーだ。アップルによると、iPhone 6sシリーズ、iPhone 7シリーズ、iPad Proシリーズの、A9プロセッサ以上を搭載する各モデルでAR Kitを利用できるとしている。

カメラ、CPU・GPU、モーションセンサーを利用してARを表示。制約が少なく多くのデバイスが利用可能になる

単純に計算して4億5000万台以上のデバイスが、iOS 11へのソフトウェアアップデートのみでARを用いたアプリをサポートすることを意味しており、アップルは「世界最大のARプラットホーム」と豪語する。

グーグルやフェイスブックは、デバイスの性能に関する言及をしておらず、特にデバイスの性能やOSのバージョンの断片化が進んでいるAndroidは、ARをサポートするスマートフォンが限られている。この点が、アップルのAR環境における優位な点、と考えて良いだろう。

ただし、現段階でARKitが、これまでのARの取り組み、例えばマイクロソフトのHololensやグーグルのProject Tangoと比較して進んでいるわけではない。認識するのは平面だけであって、壁面をとらえられるわけではないのだ。

開発者が用途を考える

アップルが基調講演やハンズオンエリアで示したデモは、非常に基本的なAR活用だった。テーブルや床、あるいはその双方を認識してオブジェクトを配置し、カメラの動きによって正しいサイズで表示し続ける。また平面にゲーム盤を置いてプレーを楽しむ、といった内容だ。

平面にゲーム盤を置いてプレーが可能

またアップルは、組み立て家具の世界的ブランド、イケアと組んで、ARKitを用いたアプリで、イケアの家具を家の中に配置できるカタログを準備しているという。こちらも、AR活用ですぐにニーズを作り出すことができるだろうが、新鮮味はない。