音声操作デバイス元年になるのか
グーグル、アマゾン、マイクロソフトといった巨人たちが出揃ったほか、LINE、アップルといった役者も揃い、いよいよ本格的な市場の立ち上げに向かうかに見えるスマートスピーカー市場だが、果たして日本では受け入れられるのだろうか。
Amazon Alexaなど実力が不明なものもあるが、おそらく音声認識の水準としては、各社ともに実用性が高い段階まで来ていると思われる。こうした技術は人工知能により学習を重ねてより認識度が高まっていくものなので、ユーザーが増えればどんどん改善されるだろう。その点は心配していない。どちらかといえば技術面よりも、文化的な要素のほうが気がかりだ。
もともと米国などは電話でもハンズフリー通話が広く受け入れられており、人前で通話したり、大きい声で会話することがさほど問題視されない文化がある。ところが日本では、家庭の中であっても大きな声で会話することはあまり行儀がいいこととはされておらず、電話でも他人に聞こえないように配慮する人が多い。
端的に言えば音声認識のキモとなる「大きな声ではっきりとしゃべる」こと自体が比較的難しい状況にあるわけで、一人暮らしならばともかく、日本の文化的に、リビングなどにスマートスピーカーを置いて使う、というのはあまり受け入れられないのではないかと思う。筆者も自室でSiriやGoogle Asssitantに命令していると、家人が「何か言ったー?」などと声をかけてくることが多く、あまり大きな声で入力できないのが実情だ。
また、スマートホーム製品の制御なども、現状でそういった製品がほとんど普及していないことを考えると、あまり目玉機能だとは言えない(アップル製品を専門とし、家中アップルだらけの筆者ですら、iPhoneで制御できる家電はほとんどないのだ)。単独で音楽再生サービスが利用できるというのも、対応したサブスクリプションサービスに加入している必要があるわけで、一般のユーザーには比較的敷居が高い気がする。家の中で常時スタンバイ状態の音声認識デバイスがいるというのは、プライバシーの観点からもあまり好ましくないという人も多いだろう。このままでは、ほとんどの人にとって「別になくても困らない」と思わせてしまうように思われる。
もっとも、Amazon Echoも、実は半数近くはリビングではなくキッチンに置かれているという調査結果もあるほどで、スマートスピーカーは「一家に一台」とは言いつつも、案外パーソナルな場所で使われるデバイスになるのかもしれない。そう考えると、ターゲットユーザーとしてはむしろ主婦や女性層を狙い、コンテンツにも料理ガイドなどを充実させるのが普及のカギになったりはしないだろうか。
また、会話していることが不自然でないインターフェースを与えることで、自然に音声通話が受け入れられる素地になるかもしれない。具体的にはロボットのような姿を与えることが日本人の心情的にも向いていると思われる。その点、LINE FACEなどは非常に大きく育つ可能性を秘めたデバイスだと言えるだろう。
いずれにせよ、Google Homeの導入で市場は動き出してしまった。前評判のわりにいまいちパッとしないスマートウォッチ市場の二の舞にならないように祈りつつ、各社の動向を注目したい。