Apple Teacherは、教室内でのコンピュータ活用を前提とした授業設計が可能になる能力を持った人々を、Appleが発見し支援するのに役立つ。彼らがどんなニーズを持っているのかを知ることにつながり、学校内にAppleのサポーターを増やす役割も担っていくことになるはずだ。先生が授業での活用を深めれば、それだけ導入しやすくなる、ということだ。

情報の授業以外でのコンピュータ活用が増えることは、学校の予算を使う場合、あるいは生徒が個人でデバイスを購入する際の説得材料として有力になる。週に2時間しかない授業のために、300ドル以上のiPadを教材として購入することは、私立の学校であってもなかなか理解が得られない。

情報の授業で使うから、英語の授業で、プログラミングの授業で、と単独の理由を重ねていくよりも、文房具としてあらゆる授業でiPadを4年間使いますという方が、導入しやすいことは想像に難くない。

そのためには学校内でも、得手不得手を乗り越えて、様々な教科の先生が活用の道を模索しなければならない。その独習教材を、Apple Teacherのウェブサイトが用意しているというわけだ。

第五世代iPadは、価格競争力の面では、引き続きChromebookに引けを取ることになる。しかし、厚みを増し、バッテリー容量を増やした9.7インチのタブレットは、ボディのタフさを増し、また3年が経過しても動作が重くならない、不具合を少なく利用できる、といったデバイス時代の「4年間のコスト」ではメリットがある。加えて、学校内で文房具として活用するための方法を提供することで、教育市場に不可欠な道具として、再び、じっくりと入り込んでいこうとしている。

松村太郎(まつむらたろう)
1980年生まれ・米国カリフォルニア州バークレー在住のジャーナリスト・著者。慶應義塾大学政策・メディア研究科修士課程修了。慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)、キャスタリア株式会社取締役研究責任者、ビジネス・ブレークスルー大学講師。近著に「LinkedInスタートブック」(日経BP刊)、「スマートフォン新時代」(NTT出版刊)、「ソーシャルラーニング入門」(日経BP刊)など。ウェブサイトはこちら / Twitter @taromatsumura