まとめと考察

ということで、ざっとテストを流した結果で言えば、確かに性能面でもCore i5と十分拮抗していることが分かる。確かにSingle Thread性能では、若干見劣りするが、コアの多さとSMTのサポートで補っている。

いわゆるレンダリングやエンコードなどのSM対応アプリケーションでは、明確に高い性能が期待できる。その一方でDirectX 11系ゲームでも、Radeon RX 480程度のGPUを組み合わせている限りにおいては性能面のデメリットはほとんど感じられない。

ただし、今回は性能面において、綺麗に競合と拮抗しているのが確認できたが「これはDDR4-2933のおかげではないのか?」という疑念は当然付きまとう。まぁ個人的には影響はそれほど大きくないと思っている。

というのはRYZENは16MBものL3キャッシュを抱えているからで、今回のアプリケーションベンチの中で、メモリ性能がそのまま効くのは、強いて言えばTMPEGEnc Mastering Work 6くらいのものだろう。しかしながら、これを確認した訳ではない(その時間も無い)から証拠を示すことはできない訳で、そうなると「遅いメモリだともっと性能が落ちるんじゃないか」という疑問を、ユーザーに植え付けることになりかねない残念な措置であったというのが筆者の感想である。

また、お買い得感があるか? というとこれも微妙なところである。日本AMDによれば国内での希望小売価格は

  • RYZEN 5 1400:21,000円
  • RYZEN 5 1500X:23,800円
  • RYZEN 5 1600:27,800円
  • RYZEN 5 1600X:30,800円(いずれも税抜き)

となっている。一方Core i5の方だが、Amazon.co.jp調べでは

である。一見RYZEN 5がお買い得に見えるが、Amazonの価格は税込みであることを考えると、実はRYZEN 5の方がちょっと値段が高い。まぁこれは発売後3カ月経って、値段が落ち着いてきたCore i5と、出たばかりで、しかも相変わらず品薄が続くRYZENの違いでもあって、ある程度経てば同等になると思うのだが、つまるところお買い得感もCore i5とRYZEN 5でさして変わらないだろう。

個人的に「お前ならどうする?」と聞かれたら、RYZEN 5 1600Xを選ぶだろう。今回の性能差を見ると、Single Thread対応アプリケーションはほぼ同じ程度ながら、SMT対応アプリケーションでの性能面でのマージンは非常に魅力的である。さらにこの差は、RYZEN 5 1500Xとの7000円の価格差を正当化するのに十分だと思う。

品不足も気になるところだ。ショップでは入荷数が少ないとアナウンスしているところもある。買いたくても買えない、という状況は短期的にはいいかもしれないが、長期間続くと嫌気がさしてくるだけに、RYZEN 7も含めて早急に何とかして欲しいところである。