さて、Workflowでは、iOSに標準搭載されているアプリや機能を使うだけでも、実にたくさんのワークフローを作り上げることができる。アプリ間で機能を呼び出したり、データを受け渡すことができる仕組み(ウェブでいえばAPIアクセス)のような手法を使うことで、冒頭で紹介したような、複数アプリの機能にまたがるワークフローを生み出せる。

また、iPhoneの標準アプリや、インストールされているアプリを利用する点は、Appleに限らず、スマートフォンを深く使いこなす上での重要な手法となり得る。

Appleは日本でも、教育機関でApple製品を学修や授業に取り入れる教員を認定する「Apple Teacher」制度を導入し始めた。オンラインで無料でAppleの学校での使いこなし方を学び、クイズを解くことで、やはり無料でApple Teacherの認定を受けられる。

Apple Teacher

その教材は実に良くできている。デバイスの機能やPages/Numbers/Keynote、iMovie/GarageBandといった無料のアプリの使いこなし方を学んだ後は、iOSやこれらのアプリを組み合わせて、1つの学習目標を効率的にまとめたり、創造性を発揮するアウトプットを作り出す指導のためのヒントを得られるようになっているのだ。Apple Teacherの教材で意識されているのは、個別の使い方を習得することではなく、複数のアプリを自由に組み合わせて目的を達成する、「教室内でのワークフロー」なのである。

優れたアプリを複数組み合わせることで、洗練された結果を得る。Appleが今後のiOSプラットホームで狙っていくのは、単なるアプリ数やデバイスの普及数ではない、結果を体感することができる有効性だ。

iOS 10で開発者は、自分のアプリを開かなくても、メッセージやマップでそのアプリの機能を呼び出して使うことができる仕組みを取り入れた。その際、筆者は、各アプリの機能が切り出され、必要な文脈で利用できるようになる、と表現した。そうしたiOSアプリの変化は、Workflowの有効性をより高めることになるだろう。例えば、Workflowがメッセージやマップのように、他のアプリの機能をアプリ内で呼び出せる存在になったとすれば、アプリ内の1つの機能が、Workflowを自由に構成する要素として活用できるようになることを意味しているからだ。