AppleがWorkflowを買収した戦略的な理由については後に述べるとして、今回の買収によって1つのサクセスストーリーが完結したと見ている。
前述の通り、Workflowのチームは2014年にアプリをリリースしているが、彼らは学生としてWWDCに参加したところから出発していた。学生が制作したアプリとして大ヒットを記録し、複数のアプリにまたがるワークフローを音声操作に対応させた点が評価されてApple Design Awardに輝いた後、Appleに買収される。もちろんアプリスタートアップにとって、Appleによる買収が唯一のゴールではないが、iOSエコシステムを深く理解し、ハックする手段を提供してきたアプリにとっては、最良のエグジットとなったのではないだろうか。
Appleにとっても、この企業を買収する価値はいくつもある。iOSの未来に影響する価値の前に、Appleのアプリエコシステムに関する価値だ。
Appleは毎年、1,500ドルの費用と厳しい抽選をくぐり抜ける必要があるWWDCへの参加を、学生向けに解放するスカラーシップを提供してきた。昨年にはiPadでアプリ開発言語Swiftを学び始めることができるSwift Playgroundsも公開されている。つまりAppleは、Swiftを用いてアプリを開発する若い人材を増やす努力を、Swiftリリース以来続けてきたのだ。そうした取り組みの中で、学生としてWWDCに参加し、アプリが大ヒットして、Appleに採用されるというサクセスストーリーは、非常に分かりやすく、かつ説得力のある、Swiftにまつわるキャリアパスを示したことになるからだ。