時代に則した機能拡張を行うシステム面 その1

Windows 10の根幹となるシステム周りは幅広い改善と機能拡張が行われている。Windows 10 バージョン1607からサポートしたWSL(Windows Subsystem for Linux)上で動作するLinuxディストリビューションのUbuntuもTrusty Tahr(14.04 LTS)からXenial Xerus(16.04 LTS)に更新し、ifconfigコマンドや24ビットカラーのサポート、BUW(Bash on Ubuntu on Windows)上からデスクトップアプリを起動できるようになった。ただし、いまだにベータ版の文字は消えておらず、リリースノートを確認すると、WSLの開発はビルド15046で一段落させ、続きはRedstone 3で続けると言う。

とあるシェルスクリプトをBUW上で実行した状態。ご覧のようにカラフルな色を再現できる

WSL自体はいまだにベータ版。互換性テストも100%に達していないものの、着々と完成度は高まっている

ネットワーク面に目を向けると、いくつか気になる改善が加わっている。まず通知領域に並ぶWi-Fiアイコンのフライアウトメニューには、作成したVPN接続が並ぶようになった。Windows 10 バージョン1607までは「設定」などから接続を実行しなければならず、操作が煩雑だったものの、メニューからワンクリックで接続できるのはVPN接続を多用する方には有益な改善となるだろう。もう1つは無線LANの再接続機能。Wi-Fi機能を無効にすると、手動/1時間後/4時間後/1日以内のいずれかを選択することで、再接続を自動的に実施するというもの。例えば外出時にバッテリー消費を抑えるために無線LAN接続を切り、帰社・帰宅時など電源を確保できる状態で無線LAN接続を行う際に便利である。

Wi-Fiアイコンのフライアウトメニューには、VPN接続や無線LAN再接続の設定が加わった

同じくネットワーク周りということで、「設定」の<デバイス/Bluetoothとその他のデバイス>も合わせて紹介しよう。Windows 10 バージョン1607までは<デバイス/接続中のデバイス>と<デバイス/Bluetooth>に分かれていたカテゴリーを1つにまとめた状態だ。Microsoftは接続形態にこだわる必要がないという判断による仕様変更と思われるが、どのデバイスがBluetooth経由の接続なのか分かりにくくなったという欠点が生じている。デバイス名の下に並ぶメッセージである程度判断できるものの、PCの全体構造を把握するには「デバイスマネージャー」の併用が必要になりそうだ。なお、Bluetoothに関してはGATT(Generic Attribute Profile)サーバーやBluetooth LE(Low Energy)デバイスとの接続を可能にするため、Bluetooth APIを刷新している。

PCに接続したデバイスが並ぶ<デバイス/Bluetoothとその他のデバイス>。ここからBluetoothデバイスを判断するには、<ペアリング済み><接続済み>のメッセージを参考にするとよい

<Bluetoothまたはその他のデバイスを追加する>をクリックすると、各デバイスの追加が可能になる

過去のWindowsを振り返ると、一時ファイルなど不要なファイルを削除するために「ディスククリーンアップ」機能を備えてきたが、Win32アプリケーションのため、今後はなくなるかも知れない(バージョン1703では顕在だ)。このように推察する理由が新たに搭載した「ストレージセンサー」の存在だ。バージョン1703では、UWPアプリケーションの一時ファイルや「ごみ箱」に移動して30日経過したファイルを自動的に削除する機能である。ディスククリーンアップと比較すると対象項目は少ないが、自動実行するのは非常に大きい。

「設定」の<システム/ストレージ>に並ぶ「ストレージセンサー」。既定でスイッチはオンになっている

<空き容量を増やす方法を変更する>をクリックすると、削除対象の取捨選択や手動実行も行える

システム内部では3.5GB以上の物理メモリーを搭載しているPCの場合、バックグラウンドで動作するサービスホストのプロセス数が増加するようになった。Windows 10 バージョン1607まではメモリーを節約するためにサービスホストから複数のプロセスを呼び出していたが、何らかの衝突が発生すると他のプロセスに悪影響を及ぼしまう。だが、今回のプロセス分離で個々の安定性が高まり、サービスを実行する権限も分離するため、セキュリティも向上する。ただし、4GBしか搭載していないPCの場合、本機能が有効になることでアプリケーションに割り当てるメモリーが減ってしまうらしく、体感的には少々遅くなった印象を持つ。前述したように本仕様変更はメリットが大きいため、今後PCを選択する場合は8GB以上が1つの目安となりそうだ。

Windows 10 バージョン1703の「タスクマネージャー」。プロセスの分離が確認できる

Windows 10 バージョン1607では、いくつかのプロセスがひとまとめになっている

もう1つ紹介しておきたいのが「動的ロック(Dynamic Lock)」機能である。PCとペアリングしたBluetoothデバイスを検知し、PCの近くに利用者がいない場合は30秒後にPCをロックするというもの。実際にWindows 10 MobileデバイスをPCとペアリングして離席すると、Microsoftの説明どおりロック機能が動作した。本機能はWindows 10 Mobile限定なのかと思い、iPhone 7をPCとペアリングして動的ロックの動作を検証したところ、iOS側ではペアリングに成功してもPCが「未接続」と表示されている点は少々気になるところだが、Windows 10 Mobileと同様の結果を確認している。確かに便利な機能だが、ロック解除はWindows Helloなど通常の操作が必要になるのは残念だ。可能であればデバイスを検知してロック解除までできればスマートな印象を持てたことだろう。

Bluetoothデバイスの存在を検知してロックを解除する「動的ロック」