シャープは、液晶のイメージが強い。そして、ブランドイメージを形成するのは、液晶テレビ「AQUOS」や、ヘルシオなどの白物家電製品。最近では、「ロボホン」も、シャープを象徴する製品だといえる。だが、こうした表看板ともいえる事業のような派手さはないが、シャープには、BtoB領域において、45年の歴史を持ち、同社の「信頼」を支えてきた事業がある。それがビジネスソリューション事業である。
1972年にシャープ初の複写機「SF-201」を発売。以来、これまでに約1800万台の出荷実績を持ち、コンビニエンスストアに設置されている複合機では、約6割という高いシェアを誇る。そして、複写機を中核に、サイネージやPOSのほか、スマートオフィス製品などの展開を強化。ロボット市場への参入などにより、ビジネスソリューション事業としての継続的な成長を目指すという。シャープのビジネスソリューション事業にフォーカスしてみた。
鴻海は液晶だけ手に入れたいわけではない
「シャープは大丈夫なのか」――。
ビジネスソリューション事業を統括するシャープ ビジネスソリューション事業本部長の中山藤一専務は、昨年来、顧客から何度もこの質問を投げかけられているという。
鴻海傘下で再建を目指すシャープにおいて、報道などで何度か取り上げられたのが複写機事業の売却だ。その背景には、鴻海が手に入れたい事業は液晶事業だけであり、そのほかの事業には興味がないという見方がある。
というのも、鴻海によるシャープ買収のプロセスにおいて、なんらかの事情で鴻海による資本金払込が実行されなかった場合にも、鴻海はシャープの液晶事業だけを買収できるオプションを盛り込んでいたことがわかったからだ。つまり、買収戦略が不調に終わっても、鴻海は液晶事業だけは手に入れられる契約内容であり、この動きを見て、「鴻海はシャープの液晶事業だけを手に入れたいと思っている」との思惑があると、多くの関係者が感じたからだ。
一部には、買収後に、液晶事業以外を切り売りすれば、3888億円という買収金額を回収できるという見方すら出ていた。それだけにビジネスソリューションの継続性を不安視する声があとを絶たなかったのだ。 だが、中山専務は、その見方を完全に否定。その理由をいくつかあげた。