現在、Netflixの動画配信をスマホなどモバイル端末で楽しむには、LTEなどセルラーネットワークとWi-Fi接続の両方が使える。イェリン氏のチームが特に注力するのは、セルラーネットワークでも消費するデータ容量を抑えながら、なおかつ高品位な画質でNetflixを楽しむための技術開発だ。
Netflixのモバイル配信は、Netflixアプリが利用している帯域をリアルタイムに監視しながら、データ容量の消費を抑えつつ、高画質でストリーミング視聴できるように設計されている。
その仕組みは、「1作品につき、平均10段階前後でビットレートを変えながらエンコードを複数回行って素材をつくっている。そして、ユーザーが使っている帯域に合わせてベストな画質のストリーミングを渡している。視聴中は約10段階前後の中でリアルタイムに切り替えているが、画質が極端に劣化して見えることがないように、10段階の中で細かくスイッチングを行っている。もちろんユーザーにとって最もストレスに感じられるバッファリングが起きないようにすることが目的だ」とのこと。
昨年5月には、ストリーミングする際のデータ使用量をユーザーが手動で選択できる機能が追加された。また11月には、モバイルアプリにNetflixの作品をダウンロードして、オフライン再生が楽しめるようにサービスが拡張された。 「特にセルラーネットワークの品質が不安定な地域の方々のために、自宅のWi-Fi環境など比較的ネットワークが安定している場所であらかじめコンテンツをダウンロードできるっようにして欲しいという強い要望をいただいていたことから、継続的に技術開発に取り組んできた」とイェリン氏は振り返る。
Netflix専用のサーバーストレージ。世界各国のユーザーに快適な視聴環境を届けるため、本国アメリカに置くのではなく「ユーザーに最も近い場所で最高の体験を届けるため」として、各地域のサービスプロバイダーの拠点にこちらのユニットごと作品を納品している |
飛行機の中や地下鉄など、セルラーネットワークが使えない、あるいは不安定になりがちな場所でのコンテンツ視聴を想定したほか、パケット通信量をセーブしたいという声もイェリン氏のチームの背中を押したという。
ネットワークの通信品質をモニターするためのサービス「Fast.com」も提供する |