米NetflixはMWC2017の開催期間中、スペイン・バルセロナ市内でプライベートセミナーを実施。モバイル端末向けのHDR技術や、数ヶ月以内のローンチを予定する低速回線環境向けの高効率動画圧縮技術のデモンストレーションを行った。

今回のセミナーは、バルセロナ郊外にNetflixが構えるプライベートハウス「Netflix House」にて、限られたジャーナリストを集め開催された。セミナーにはNetflixのプロダクト・イノベーション バイスプレジデント、トッド・イェリン氏が登壇。「MWCに合わせて集まっていただいたからというわけではないが、今回はNetflixがいま特別に注力するモバイルデバイスのための映像技術を紹介したい」とし、最新テクノロジーの解説を切り出した。

Netflixのプロダクト・イノベーション バイスプレジデント トッド・イェリン氏

イェリン氏が担当する「プロダクト・イノベーション」の領域は、スマートテレビやスマートフォンなど様々なデバイスで、すべてのユーザーがコンテンツを最高の水準で楽しめるように"UXを練りあげる仕事"である。

「たとえばスマホの場合はタッチスクリーン、テレビの場合はリモコンを主に使ってNetflixのメニューを操作することになるが、どちらの場合でもスムーズかつストレスのない操作でコンテンツを楽しめるようにインタフェースの使い勝手を向上させること」が自身のチームの役割であるとイェリン氏は語る。またレコメンドエンジンのアルゴリズム開発、そして映像の画質向上もイェリン氏のチームが奮闘するフィールドであるという。

いまNetflixでは「特にモバイルの画質向上に注力している」とのことだが、これからはさらにスピードアップしながら倍以上のリソースを費やしていくとした。その理由をイェリン氏が次のように話す。

「Netflixユーザーが最も視聴に利用しているデバイスは、スマートテレビとスマートフォンであることが調査によってわかっている。反対に、少しずつ数が減っているのはタブレットとノートPCだ。ユーザーにアンケートを取ったところ、いまテレビを見る時間の約2/3をNetflixのコンテンツ視聴に費やしているという答えが返ってきた。そう聞くと、つまりスマートテレビで視聴する比率が多いのだろうかと思われるかもしれないが、事実を突き詰めていくと『テレビとスマホを上手にハイブリッドで使っている』ということが見えてきた」(イェリン氏)

たとえば、Netflixの連続ドラマをリビングで見たあと、寝る前に続きが気になってスマホにイヤホンを挿しもう1話みてしまう、といった使い方をしているユーザーが多いのではないかとイェリン氏が説く。その背景には快適なマルチデバイス再生環境を整えることにイェリン氏のチームが腐心してきた成果の積み重ねがある。

Netflixのサービスがローンチされて以後、モバイル視聴の比率が順調に伸び続けている国が3つあるという。日本と韓国とインドだ。いずれも、Netflixが今後成長するために高いポテンシャルを持っていると考えている国で、「それぞれの地域でサービスをローンチしてから、Netflixは色んなことを学んでよりスマートなサービスに育つことができた。登録アカウント数は2016年末で9,300万人を超えている。特に北米以外での伸びが堅調であり、これからも成長を続けていくためにはモバイル視聴の環境を充実させていくことが不可欠」とイェリン氏は戦略の意図を語った。