複数技術の組み合わせによる「体験」が加速する年に
人工知能や機械学習といわれても、何が起きるか、すぐに想像できる人は少ない。確かにこれまでもこれからも注目されていく技術であるが、「何に使うか」「どんな問題を解決するか」が重要であり、その技術だけがあっても何も起きないのだ。目的と、それを達成するためのデータが必要になる。
同じように、ARやVR、ロボット、IoT、センサなど、ここで挙げる様々な要素技術は、それだけあっても多くの人が何かに気づくことは難しいのだ。ただ、これらの技術を組み合わせて「体験」を作り上げることで、人々を惹きつけ、また新しい時代を感じさせることに成功する。
例えばPokemonGOは、スマホのカメラのプレビュー画面にポケモンが登場することで、実際の街を歩きながらそこポケモンがいるかのようなワクワク感を作り出した。キャラクターとゲームのルール、そしてARという表現の組み合わせによって作り出された世界観だ。
前述のSpireは、呼吸データから割り出した集中やリラックス、ストレスといった状態と、その人がいた場所(位置情報)、見たもの(写真)、会った人(スケジュール)と組み合わせて、どこが仕事に集中できるか、何を見たらリラックスできるか、誰に会ったらストレスを感じるか、といった傾向を教えてくれる。これも、呼吸データの解析とその他の情報との組み合わせによって知ることができる新しい事実だ。
また、Amazon GOは、機械学習、マシンビジョン、センサネットワークを生かして、顧客がカバンに商品を入れて店を出るだけで決済が済む店舗の仕組みを実現した。米国での生活において、スーパーのレジ待ちはいやな時間として筆者も日々経験している。それをなくしてくれるという「体験」によって、こうした技術が何の役に立つのかを知ることができる。
トレンドとなっているが、どんな役に立つのか分からない技術は、実際、体験して初めて、その技術の有用性に気づくことができるのだ。
2017年は、技術の成熟によって、こうした技術の「体験化」が加速していく1年になると予測している。2016年よりも、技術に驚かされ、その意義を実感できる瞬間が増えていくことに期待している。