ライブ

2016年のモバイルのトレンドとして注目していたのは、ライブ放送だ。これまでもPeriscopeやLiveStream、日本ではニコニコ生放送、Ustream、ツイキャスといったサービスが花開いてきたが、米国で動いたのはFacebookだった。2016年4月にFacebookは同社のSNS上でライブ配信を行うことができる仕組みを披露、発展させた。

また、Snapchatはストーリーという機能を備え、リアルタイム性の高い情報を世の中から切り取る仕組みを作り出した。Facebook傘下のInstagramは、Snapchatのストーリーとともに、Facebookのようなライブ配信を行う仕組みをアプリに入れた。

Twitterは、Periscopeを買収し、Twitterアプリ自体でライブ配信を可能にした。またアメリカンフットボールや大統領選挙など、米国で注目が集まるイベントについて、Twitterアプリ内でライブ配信を見ながらツイートができる仕組みを実現した。

2016年のソーシャルメディアでのトレンドは間違いなくライブであり、2017年はケーブルテレビ局などの大手メディアがさらに力を入れてくる分野になると考えている。

その際に期待されることは2つだ。

1つ目は、コンテンツの制作方法だ。YouTubeでのコンテンツ作りや人気チャンネル作りのテクニックは収斂しつつあるが、ライブのコンテンツ作りのノウハウが蓄積していくのはこれからだ。Vidpressoなどの企業は、ライブコンテンツをビジネス化したり、より多くのコミュニケーションを作り出すためのツールを提供し成長している。

2つ目は、ライブと他の技術との融合だ。例えばライブ放送とVRが紐付けば、多くの人がその場所に行ったかのような疑似体験ができるようになる。またライブとアシスタントの組み合わせは、映像や音声から自動的に周辺情報を提示してくれるコンテンツを作り出せるかもしれない。

セキュリティとパーソナリティ

2016年12月から、米国にビザなし渡航する際に取得するESTAに、ソーシャルメディアのアカウントを登録する欄が追加されている。もちろん現在はオプション扱いであるが、将来的には必須になる可能性もある。

国家安全保障上の措置であることは理解できるし、例えばテロリストがすんなりとこの情報を登録することはないだろうということも想像に難くない。しかしSNS情報の提出が、より安全な人物であると証明する情報の提供、つまりホワイトリスト入りのための条件になるとすれば、それはプライバシーや人権の問題として見過ごすことができない。

前述のようにSNSには、友人とのつながりや体験したこと以外にも、様々なデータが紐付けられていくことになる。同時に、どんなデータが蓄積されているのか、我々で管理することが難しくなってきている。

データの流失のリスクとともに、SNSに記録されたデータが、本人とは異なるパーソナリティを発揮することも考えられる。前述の例であれば、ちょっとおふざけで撮影したハロウィンのコスチュームの写真が、「なんらかの軍事訓練の風景」と機械的に判断されれば、事実とは異なるフラグが立ち、入国の障害になることも考えられるからだ。

これは現在見えていないが、突発的に発生する可能性があるリスクであり、2017年にこうした問題に関する議論と、その解決策に向けた動きがどのように進展するか、注視していく必要がある。