アシスタント
2016年に筆者が最も関心を持ったサービスは、Googleアシスタントだ。音声もしくはテキストでの会話形式で、我々の様々な質問や問題を解決してくれる人工知能のアシスタントで、グーグルがリリースしたPixelスマートフォンでは、誰かとユタ州のリゾートについて会話していたら、そのリゾートについて先回りして検索してくれるような賢さを持つ。 Amazon Echoは、米国で最も人気のある音声認識アシスタントだが、すでに5000を超える機能を声で行うことができるようになった。
Googleアシスタントがユニークだったのは、スマートフォンでは「声」よりも、友人とのチャットや、検索していたこと、今いる場所といった情報を活用してくれる点だ。明示的でなくても、さっと情報を用意してくれる。そんな控えめで有能なアシスタントの姿に好感を持った。
ちなみに、アップルのSiriは音声アシスタントばかりが注目され、他のアシスタントに比べてその有用性を証明できずにいるが、そこには誤解がある。
Siriは音声インターフェイスだけではなく、iPhone内のデータやユーザーの利用パターンを学習するエンジン、そして検索が含まれており、例えば電話帳に登録していない相手からの着信について、メールの検索データと照合して、差出人の名前を「もしかして」と着信時に表示してくれる。また、電話番号での通話ではなく、LINEでの通話をよくする相手には、電話帳を開いたときの通話ボタンで、自動的にLINEを利用する、といった振る舞いをしてくれる。
我々はモバイルにおいて、より多くの時間をアシスタントとの対話や、アシスタントがもたらす情報の利用に費やすことになるはずだ。そこにはコミュニケーション上のニュアンスの齟齬が生じたり、鉄道が止まったなどのトラブル時の判断にも影響してくる可能性があり、普段からアシスタントの特性を知っておく必要が出てくるだろう。
ボットとIoTが描き出す世界
日本ではTwitterで動作するボットが人気だ。好きなアーティストの発言を定期的にツイートするボットや、地震発生時などにそのデータを速報するボットなど、既に実用的な情報手段として、あるいはエンタテインメントのインタフェイスとしてその役割を果たしてくれている。
そうした有用なボットが、IoTデバイスによって、タイムラインやスマホの画面の外の世界に登場したらどうだろう。多くのIoTデバイスはセンサを持っており、アクティビティトラッカーが我々の身体データを集めるように、IoTデバイスはその場所や特定の事象のデータを蓄積している。IoTデバイスは、そうした現実世界の事象をデータ化する役割を持つ。データ化されれば、今までサーバの中で動いていたボットが現実世界の事象を扱えるようになる。
IoTデバイスも汎用化が進んでいる。例えばRaspberry Pi財団は、Raspberry Pi ZEROという5ドルの基盤型コンピュータをリリースした。これとなんらかのセンサを組み合わせれば、自宅でなんらかのデータを取り続けるセンサを1,000円以下で作っておくことができるようになる。これによって、ボットのための栄養分であるデータはさらに多く作り出され、我々はより多く、即座に世の中のことを知ることになるだろう。