アップルの2016年は、15年ぶりの減収減益という決算で終えた。主力のiPhone 7も大きな変更はなくマイナーチェンジに留まり、4年半ぶりに刷新されたMacBook Proはプロユーザーから大きく受け入れられている状況ではない。
アップルファンだけでなく、モバイルアプリ開発者にとっても、低調なアップルのビジネスは望ましくなく、また寂しいものだ。2017年、アップルはこうした状況を打開していくのか、4つの視点で考えていこう。
大局的に見れば、アップルほどスマートフォン製造で利益を上げている企業はなく、後述の通り、iPhoneユーザーから更なる収益を得る仕組みも上手く回り始めている。あとは、顧客に対して、きちんと満足度やサプライズを与えることができるかどうか、そして開発者が心地よいと感じる環境を提供し続けられるかどうかが重要で、どちらかというと筆者は楽観的に見ている部分が大きい。
視点1:10周年のiPhoneにとって機能以上に重要なこと
iPhoneはアップルのビジネスの中で最も大きなカテゴリだ。2016年度は全体の64%の売上をiPhoneから叩きだし、名実ともにiPhoneの会社、となっている。そのiPhoneの販売台数が低調だったことは、アップルにとって、屋台骨を揺るがす事態、ということになる。
アップルも決算発表の電話会議で明らかにしているが、2016年度の落ち込みは、2015年度の特需の反動、という見方だ。2015年度に販売していたのは2014年9月発売のiPhone 6とiPhone 6 Plusだった。
アップルはiPhoneの大画面化を果たすタイミングを、中国でのハイエンドスマートフォン市場の急拡大に合わせ、中国市場の旧正月を含む2015年第2四半期に、欧米のホリデーシーズンを含む第1四半期並みの6117万台を販売することができた。
2015年9月発売のiPhone 6s、iPhone 6s Plusを擁する2016年度は、第1四半期はiPhone 6・iPhone 6 Plus以上の販売台数を達成したが、第2四半期に1000万台減となり、その後も前年同期比減を続けることとなった。これが、特需の反動だと説明する理由だ。
2016年度は中国株式市場の不安や、ハイエンドスマートフォン市場の飽和による成長鈍化、買い換えサイクルの長期化が重なり、iPhoneだけでなく、ハイエンドのAndroidスマートフォンも危機的な状況に陥っている。
今まで慣例的に2年周期でフルモデルチェンジを行ってきたが、買い換え周期の長期化のトレンドに合わせるという意味で、iPhone 7をマイナーチェンジにとどめる判断は説明が付く。
最も良いシナリオで解釈すれば、2016年は、2015年度の特需の反動をこなしつつ、買い換え周期の調整とし、iPhone 10周年を迎える2017年にデザインや機能を含めた全く新しいiPhoneをリリースする環境作りのための「環境作り」に費やした、と見ることができる。
あとは、本当に2017年にiPhone買い換え特需が訪れるのか、それを喚起するだけの魅力的な新型iPhoneをリリースできるのか、という点にかかっている。