こまかなパフォーマンスの改善

さて、最後がMakedon氏によるコンシューマ向けのRadeon Softwareの説明である。コンシューマ向けには大きく3つの変更点がある。

まずはこまかなパフォーマンスの改善や機能追加から。バグフィックスリスト(Photo26)を示しながら、2015年よりも25%テストやマニュアルを増やし(Photo27)ため、性能を改善(Photo28)したほか、新機能としてDisplay Connectivityで不良ケーブルを診断できるようにした(Photo29)という。

Photo26:2015年だとこんな感じだった

Photo27:Crimson Editionの時点で、以前よりも大分増やしたのだが、そこからさらに25%増やしたそうだ

Photo28:微妙なところであるが、これは後で確認してみることにする

Photo29:なんでもRadeon Technologies Groupを率いるRaja Koduri氏がゴミ箱からケーブルを拾ってきて自分のマシンに繋いだら画面が出なかったとかで大騒ぎする羽目になったことから追加された機能だそうだ。画面がでなかった理由は当然ケーブルが悪かった(だからゴミ箱に捨てられていた)のだが、それを簡単に判断できる機能だという

またVP9のデコードのアクセラレータ(Photo30)やHDR Gamingへの対応(Photo31)、FreeSyncの改善(Photo32~34)、Skypeへの対応、DisplayPort HBR3モードのサポートなどが示された。

Photo30:基本はGCNだが、APUについては第7世代のStoney Ridge以降ということで、つまりKaveri/Godavariは対応外となる模様

Photo31:HDR10とDolby Visionをサポート。ただこちらはR9 3xxとR9 Fury、及びRX 4xxシリーズのみの対応

Photo32:フルスクリーンモードで複数のアプリケーションを切り替えて使うボーダレスモードが新たに追加された

Photo33:このボーダレスモードでのレスポンス時間を短縮

Photo34:FreeSync On/Offを急に行うのではなく、次第に変化するように変更

Photo35:これに関しては詳細な説明がなかったのだが、ビデオ通話時の性能改善だろうか?

Photo36:HBR3ではビットレートが8.1Gbpsに引き上げられ、8K/30fpsとか4K/120fpsが1本のケーブルで可能になった。とはいえこれはハードウェア側の対応が当然必要で、現在はRX 4xxシリーズのみが対応できる

このほか、Thunderbolt 3を使っての外部GPUのサポートを行うXConnect Technology(Photo37)やインストーラの改善(Photo38)、Radeon Setting画面でのアドバイザの改善(Photo39)、フィードバックの機能追加(Photo40)、さらにLinux DriverでのFreeSyncのサポートなども紹介された(Photo41)。

Photo37:XConnectそのものは2016年6月のRadeon Crimson 16.3からサポートされている

Photo38:クリーンインストールオプションがついたのは非常に助かる

Photo39:お勧めゲームを出してくれるのだが、いまのところ北米のみとのこと

Photo40:単にRating(左)のみならず「何が良かったか」を投票できるようになったそうだ

Photo41:これはOpen Source Driverの方ではなく、AMDのProprietaryドライバでのサポートと思われる

消費電力を削減する「Radeon Chill」を搭載

2つ目は、Radeon Chillの搭載である。2016年6月末にAMDはHiAlgoという会社を買収したのだが、ここが開発していたChillというソフトウェアをRadeon Wattmanに統合した形だ(Photo42,43)。

Photo42:イメージ画像ではあるが、さすがにこれは大げさすぎる気がする。一応Chillを有効にすることで、最大31%消費電力が下がるとする

Photo43:消費電力が下がれば当然温度も下がるわけで、88.4℃だったのが77.3℃まで下がるというケースがあるとする

これは何か? というと、要するにマウスを動かすような、ユーザーのレスポンスが必要となるシーンではフレームレートを高くするが、マウス操作なしで勝手に動いてゆくようなシーンではフレームレートを落とすことで、省電力化を図るという仕組みである(Photo44)。

Photo44:激しく動いているシーンではフレームレートをフルに高めるが、単に画面が流れるだけのシーンではそこまでフレームレートを高くする必要がない、ということでフレームレートを下げることで、結果的にGPUの負荷を減らし、省電力化と温度低下を狙う仕組み

実際に会場ではWorld of Warcraftを動かすにあたり、Radeon Chill On/Offでどれだけ消費電力が変わるかといったデモも行われた(Movie01)。デモの前半、静止状態でのシステム全体の消費電力はChill Offが232Wに対しChill Onが178Wと54Wほど低くなっている。ただ、後半動き始めると煩雑にChill Onの消費電力は上がったり下がったりしている。要するにマウスの動作などで激しく動くとそれにあわせてフレームレートを引き上げるという仕組みである。

ちなみに現時点で対応しているのは18タイトル程度(Photo45)であるが、これはHiAlgoを買収した当時に彼らが対応していたのがDX9/DX11のゲームだったからで、これから対応ゲームは増やしてゆくという話であった。またDX9/11なら何でも動くという訳でもないそうで、それもあってデフォルトはOffに設定しているそうだ。これにちょっと絡む話であるが、Radeon Wattmanの対応機種にR9 2xx/3xxとR7 2xx、それとR9 Furyが加わった(Photo46)。

Photo45:ちなみにDX9とDX11は基本的に同じフレームワークが利用できるが、DX12やVulkanは異なるフレームワークが必要なので、現在作業中との話であった

Photo46:Radeon Wattmanは従来RX 4xxシリーズのみの対応だった

画面の配信機能「ReLive」

さて、3つ目がReLiveである。Crimson ReLive EditionのReLiveという名前からも判る通りこれがある意味最大の目玉なのであるが、要するに画面のキャプチャや記録/配信を行う機能が追加された(Photo47)。

Photo47:このReLive機能はConsumer向けのみならず、Pro向けにも提供される

AMDはこれまでTwitchをこうした用途に推奨していたが、配信プラットフォームもTwitch以外に複数登場しており(Photo48)、これらを包括してサポートする必要があると判断したという。またゲームだけでなくエンタープライズ用途でもこうした配信のニーズが高まっており(Photo49)、こうした用途が今後本格的に立ち上がると見越しての対応である。

Photo48:最近ではゲーム動画を配信する人よりも、そうしたゲームをプレイしている様子も合わせて、視聴する人が圧倒的に増える傾向にあるとしている

Photo49:こちらは、例えば業務アプリの操作法について、画面を見せながら説明するといった用途が増えつつあるとしている

そのReLiveの特長は、性能へのインパクトを最小にしていることだ(Photo50)。対応プラットフォームは、YouTubeやTwitchなど6サービス(Photo51)。またツールバーやオーバレイなどのカスタマイズも可能だ(Photo52~54)。Radeon Pro向けとしては、様々なアプリケーションへの対応が行われているとする(Photo55)。

Photo50:ReLiveを利用してプレイを録画しても、フレームレートへの影響は3~4%に収まるとしている。例えば60fpsが58fpsになるという程度だ

Photo51:最近は中国圏のストリーミングプラットフォームが増えており、これらにも対応する

Photo52:ツールバーそのもののカスタマイズも可能。置き場所も自由に選べるそうだ

Photo53:標準的なオーバレイ以外に自分でカスタマイズ可能。またWebCamの画面も合成できる

Photo54:Makedon氏は、この「登録不要ですぐ使える」点を強調していた

Photo55:画面をそのまま配信してのプレゼンテーションとか、操作画面を見せながらオンラインのサポートを受けるなんていうのも使い方の一つとして挙げられている

ということで、色々と機能追加がなされたCrimson ReLiveであるが、とりあえずゲームプレイに関係しそうな所で、性能の改善度合いとRadeon Chillについて実際に試してみた結果を次に紹介したい。