EVとの相性がよさそうなスバルの特性
では、スバルの独自性をいかせるエコカー戦略とは何かを考えてみると、いっそのこと、一足飛びにEVにしてしまうのが良さそうな気がしてくる。駆動用リチウムイオンバッテリーを床下に搭載し、4輪をモーター駆動にすれば、水平対向エンジンとAWDという、これまでのスバルの図式をそのまま継承する、低重心で走行性能の高いゼロエミッション車が誕生する。しかも、電動であればより緻密に4輪の駆動力制御を行うことができるようになり、低重心で安定したスバルの走りを、これまで以上の水準へ到達させることも可能だろう。
直列6気筒エンジンを最大の特長に、“駆けぬける歓び”を追求してきたドイツのBMWは、はやくもEVとPHVを手掛け、駆けぬける歓びになんら変わりのないことを実証し始めている。エンジンにこだわらなくても、伝統的な乗り味を、電動で作り込むことはできるのである。
EVというと、いまだに走行距離の短さを懸念する声があるが、いちはやく電動化へ着手したBMWは「i3」の発売後、3年弱で航続距離390キロメートルを実現した。これに発電用ガソリンエンジンを追加したレンジエクステンダーであれば、さらに足を延ばせる。
日産リーフの一充電走行距離は、現在最大で280キロメートルだが、日産では同じリーフの車体に、1回の充電で500~600キロメートル走行可能なリチウムイオンバッテリーの開発を進めており、実験車両が走行を重ねている。
あと数年のうちに、EVの走行距離を懸念する話は払拭される見通しだ。このような時代に、いつまでも手をこまぬいているのは得策とはいえない。
エコカー全盛時代は商機でもある
スバル・グローバル・プラットフォームの第1弾として、10月に新型インプレッサが発売され、走行性能が格段に高まったと評判で、日本カー・オブ・ザ・イヤーを狙おうとの勢いである。だが、その燃費性能では、欧米の燃費規制の動向に対して太刀打ちできない水準だ。
スバルは、ブランドメッセージとして「安心と愉しさ」を掲げている。その安心とは、操縦安定性やアイサイトを基軸とした安全性能だけではなく、この先スバルに乗り続けることが安心であるのかが問われている。いま、評判の新型インプレッサを購入し、5年後、そのクルマに乗り続けることに胸を張り、安心していることができるだろうか。スバル社内で考える「安心」と、新車を購入してから数年、あるいは5年、10年と乗り続ける顧客の思う「安心」との感覚のズレがないか、気になるところだ。