スバルの電動化への取り組みは
こうした情勢を踏まえ、スバルの行方を考えてみる。
2016年3月に技術発表された「スバル・グローバル・プラットフォーム」は、2025年までを見据えた次世代プラットフォームであり、将来の電動化にも対応した設計構想で実現しているという。
しかし、そこまで語られた後、詳細説明においては、事故ゼロを目指した安全と、欧州車水準を求めた操縦安定性の話に終始し、電動化への具体的な道筋は、吉永泰之社長はじめ役員から語られることがなかった。しかしその時点で、上記の欧米の情勢は進展しているのである。
この秋に改めて情報を集めてみると、2021年にはスバル独自のEVが構想されているようだ。だが、その3年前、さらに実際には来年秋にカリフォルニア州で施行されるZEV規制に対する対応はどうなっているのだろうか。このタイミングで現実的な電動車両が登場すると考えるのは難しい。ただ、追加の中堅自動車メーカーには猶予期間が設けられるとの話も出ているが…。
トヨタとのアライアンスでPHVに対応?
スバルは2014年5月の新中期経営ビジョン「際立とう2020」の中で、「アライアンスによる世界最高環境技術を融合したスバルらしいハイブリッド車を開発」すると述べている。だが、先に述べたように、すでにハイブリッド車では燃費性能が足りなくなりつつあり、カリフォルニア州のZEV規制に対しては何の効力も持たない。
アライアンスをいかすというなら、トヨタの技術を応用し、プリウスPHVのようなクルマを作るのだろうか。しかし、そのプリウスPHV自体が、この秋の発売予定を年明け発売に変更するなど出遅れている。
トヨタにはほかに、後輪駆動車用のハイブリッド機構もあるが、スバルらしさをと言うなら、これを水平対向エンジンと組み合わせていくことは可能なのかどうか。4輪駆動とするには、駆動力を前後に配分する機構が必要であり、それをトヨタのハイブリッド機構で実現できるのか。あるいは、前後どちらかの駆動力はモーターのみで行う方式とするのだろうか。何かが決定され、開発が動いているという様子や噂は伝わってこない。
もし、トヨタのハイブリッド機構をいかしたPHVが登場したとき、スバルが根幹とする水平対向エンジンとAWD(4輪駆動)を手放さざるを得なくなるとしたら、低重心と走行安定性の高さというスバルが永年培ってきた独自性が失せ、他社と同等という性質の持たせかたになってしまう。