AppleがiMessageそのものを広告収益の手段にすることはあり得ない。しかしアプリ開発者は、すでにiMessageのステッカーや、iMessageで利用できる機能をアプリに含ませてコミュニケーションに乗せることで、iMessageユーザーへのエンゲージメントを高めようとしている。例えばブログサービス「Tumblr」の最新のアップデートでは、カメラでアニメGIFを作成できるiMessage拡張機能を用意した。また12月配信予定の「スーパーマリオRun」は、ステッカーを先行して配信している。すでにインストールされていたゲーム「クロッシーロード」は、プレーできるキャラクターがステッカーとして利用できるようになっていた。そのほかにも、位置情報にチェックインできるForquare「Swarm」や、米国のスーパー、Whole Foods Marketのアプリも、アップデートで新たにステッカーが追加された。

ステッカー、iMessage向けアプリの数は日ごとに増えていっている

iMessageステッカーを含んだバージョンにアップデートしてもらうだけで、iMessageに新たに利用できるステッカーが無料で増えていくのだ。そして、そのステッカーが使われると、相手にはどのアプリをダウンロードすれば使えるのかが伝わる。アーティストのステッカーは有料のものも多いが、それ以外のアプリでは、アプリを入れてもらうかわりにステッカーを提供する、という新しいアプリのマーケティング手段になった。これは、LINEやFacebookのそれとは異なるコミュニケーションになっていくだろう。

もちろん、iMessageだけがiPhoneを選ぶ理由を作り出すわけではない。その上で、iMessageのオープン化は、ユーザー、アプリ開発者の双方にとって、魅力的な存在へと大きく進化したという印象だ。

GoogleはHangoutを企業向けに振り、人工知能Googleアシスタントを内蔵する新しいメッセージアプリAlloを導入し、メッセージアプリの競争にプラットホーマーとして参入しているが、爆発的な普及を見込むことができるかと言われると、あまり大きな期待を寄せられるものではないというのが正直なところだ。

松村太郎(まつむらたろう)
1980年生まれ・米国カリフォルニア州バークレー在住のジャーナリスト・著者。慶應義塾大学政策・メディア研究科修士課程修了。慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)、キャスタリア株式会社取締役研究責任者、ビジネス・ブレークスルー大学講師。近著に「LinkedInスタートブック」(日経BP刊)、「スマートフォン新時代」(NTT出版刊)、「ソーシャルラーニング入門」(日経BP刊)など。ウェブサイトはこちら / Twitter @taromatsumura