iOS 10はリリースから1カ月経たないうちに、ユーザーのアップデート率が50%を超えた。AppleがApp Storeで計測した結果によると、10月7日の段階でiOS 10は全体の54%に達しており、1つ前のバージョンであるiOS 9のユーザーは38%となっている。
この数字は、Appleが用意する開発者向けのページで公表された。最新のiOSを利用しているユーザーの割合は、開発者にとって、最新のAPIの採用を含むアップデートや、新しいアプリ開発にとって、重要である。新しいAPIを活用した魅力的なアプリがリリースされることこそ、AppleとiPhoneのブランドと優位性を作り出すことに他ならないからだ。
そのiOS 10を中心とした2016年のAppleのソフトウェアのトレンドを挙げるなら、「標準アプリのオープン化」が筆頭となるだろう。Siri、マップ、メッセージ、電話といったiOS標準のアプリは、それぞれの方法で、サードパーティーアプリと連携することが可能となった。
個人的には、電話アプリとサードパーティーアプリとの連携は、通信業界を揺るがす可能性を秘めた、重要な意味合いを持つことになると考えている。電話番号への着信は、他の操作に割り込んで、画面全体で着信を知らせる。しかしこれまで、LINEやFacebook Messenger、Skypeなどは、鳴動とバイブレーションは作動するものの、1つの通知として表示されるに過ぎなかった。iOS 10では、サードパーティーのアプリへの着信も、電話番号への着信と同じ扱いで、割り込んで知らせてくれるようになる。この仕様はこれまで、番号への着信以外ではFaceTime、FaceTime Audioにのみ適用されて来たが、サードパーティーにも開放された格好だ。
日常のコミュニケーションでは、アプリでの通話をより気軽で、確実にとってもらえる連絡手段として活用できるようになる。ただ、この仕様はどちらかというと、ビジネス向けの側面も強い。モダンな社内向けの構内回線システムはクラウド化されており、社員が持っているスマートフォンにアプリを導入してアカウントを設定すれば、デスクの電話でも、手元のスマホでも、内線や外線を受けることができるようになる。
こうしたアプリがiOS 10に対応することで、これまで電話番号での着信よりも分かりにくかった企業の電話の着信が、より利用しやすくなるだろう。スマートフォンが使えれば、デスクに電話を置かなくて済む上、外出先からの通信料も削減できる。AppleはCiscoと提携しているが、Cisco以外の企業、例えばNTTコミュニケーションズや、通話料を削減できる独自の通話アプリを提供している格安SIMのIIJmioにとっても、利用価値が高いのではないだろうか。