AIによるサポートは受け入れられるか

AIコンシェルジュサービスは、今回は電話サポートという位置付けだったが、音声チャットによるサポートへの応用も可能だろう。LINEトークなどのボイスチャットシステムであれば、さらに低コストでの運用が可能になるはずだ。こうした応用範囲の広さも、AIの魅力のひとつに数えていいだろう。

システムの構築方法や目的にもよるが、サポート以外の応用範囲も期待できる点は魅力的だ

懸念されるのは、方言への対応や、あいまいな質問への対応がどの程度向上するかだ。卑近な例で恐縮だが、「何もしていないのにパソコンが急に動かなくなった」を繰り返す質問者(残念なことにこのレベルの質問は非常に多い)をちゃんとサポートできるのだろうか、という疑問がある。人間ならではの「察する力」や、「相手から正しい情報を引き出す力」をAIにどこまで期待できるかは未知数だ。

とはいえ、正答率が70~80%程度であったとしても、比較的低レベルな質問を処理してフィルタリングしてくれるというのは、サポート業務の面から見れば大きなメリットだと言えるだろう。人力での対応が必要な、本当に重要な問題などはどのみち電話サポートで解決しないことが多いのだし、重要な問題にリソースを集中できるのは経営上も正しい。

「自然にしゃべっていたから人間だと思い込み、融通が利かなくて怒り出した」という事態が起きるのが心配ながら、ユーザーの視点からも、自動音声によるサポートメニュー選択が高度化したものだと思えば、すぐに疑問が解消するならそれでもいい、と思う人は案外多そうだ。少なくともITに慣れた若い層からはあまり拒否感なく受け入れられるのではないだろうか。

冒頭で紹介したようなAIチャットボットの開発目的も、オンラインサポートをチャットで処理することが視野に入っており、DeNAなど実際に開発を進めている企業も多い。これまでテキストベースのわかりづらいヘルプや繋がりにくい電話サポートといった、ユーザーから見てあまりメリットの多くなかった分野を改善するという意味では、大いに功を奏しそうだ。

今後AIによるサポートが浸透していけば、サポートはこの先、人間が窓口となり、時間はかかるが丁寧に問題を解決する高級サポートと、AIがナレッジデータベースを元に解決策を提示する安価なサポートの二極化することになるだろう。AIコンシェルジュサービス以外のサービスも続々と参入することになるだろうが、企業としてはサービスによりコスト重視、正答率重視などの個性はあるはず。そのバランスを考えながら導入を検討するのが、サポート評価の上での重要なポイントになりそうだ。