人間をサポートする「Watson」
AIを活用することで、音声でもテキストでも、人間の入力に対して自然に、現実的な速度で返答することが可能になった。こうして人とAIのコミュニケーションが人と人のコミュニケーションレベルになったことで、AIを人間のアシスタント・パートナーとして仕事に活用することが検討されるようになった。
その一例がIBM・ソフトバンクの「Watson」だ。自然言語による入力に対してDBを解析し、相手が要求するデータを推測して提示できるのがWatsonの能力だが、これを電話サポートにも利用している。具体的には、サポートの電話を受信すると、人間のサポート担当者とWatsonが同時にその会話を聞き取る。Watsonは会話を瞬時に解析し、過去のサポート事例から予測される解決策を数秒以内に提示し、サポート担当者のディスプレイに表示する。サポート担当者はその表示を元に顧客に説明を行う、という具合だ。
Watsonでは、あくまでサポート担当者が対人インターフェースとして位置付けられており、その黒子に徹している。それでも担当者が自分でDBを検索したり、経験から対応するよりも早く正確さが高まるということだろう。この方式はサポートを受ける相手は人間相手の丁寧なサービスを期待することができ、サポート側はスキルの低い担当者でも熟練担当者並の知識・対応をスピーディーに返せるという点で有効だ。
また、サポートの経験を積んでいくと、システム自身が自分で成長していく点も人工知能ならではと言える。通常業務をこなしていくだけで成長していくシステムというのは理想的だ。
AIがすべてを担当する「AIコンシェルジュサービス」
サポートの質を向上させるという点でWatsonは理想的に見えるが、問題がひとつある。Watsonはコスト的に非常に「高い」のだ。サポートセンターのコストは人件費がかなりの部分を占めるが、Watsonではサポートの窓口を人間が担当する以上、人を減らすことができない。さらにWatsonでは、「大企業でなければ導入するメリットがない」とまで言われるほど、導入コストの高さが指摘されている。質の向上にはつながるが、企業としてコスト減などのメリットを受けることはできないわけだ。
それではAIのパワーを質の向上ではなく、コスト減に集中させてみたらどうなるだろうか。それを追求したのがU-NEXTマーケティングの「AIコンシェルジュサービス」だ。U-NEXTマーケティングは光通信やMVNO事業を展開するU-NEXTの子会社で、コンタクトセンターの外部受託などを担当する会社だ。同社が、音声認識技術「AmiVoice」や、人工知能「AOI」で高い評価を得ているアドバンスト・メディアと提携して構築したのが「AIコンシェルジュサービス」となる。