近年、急速に開発速度が高まり、実用化が進む人工知能(AI)。AIの活用事例としては自動運転車などがあるが、ここに来て新たに広がっているのが、カスタマーサポート分野での利用だ。対人コミュニケーション能力を問われるだけにAIでいいのかという不安も残るが、果たしてAIによるサポートはどこまで効果を上げるのだろうか。

AIによるサポートはどこまで効果を上げるか

AIが人間の言葉を理解する

人工知能開発では様々な分野で急速に発展しているが、いわゆる人間の知能のように自発的に考えられるわけではない。あくまで、特定の分野において「自ら学習し、解析と検証を進め、成長することができる」というレベルだ(それでも以前と比べれば格段に進歩し、人間の性能を超えた部分もあるのだが)。学習において大量のデータを必要とするため、過去に実績のある分野であれば人間を超えることもあるが、まったくの新規分野では無力なのが人工知能だ。

そんな現在の人工知能が得意としている分野には「画像解析」や「データマイニング」のほか、「音声解析」「自然言語理解」がある。人間の声をデータとして解析し、何を話しているのかをテキスト化したり、話し言葉のような文法的に正しくない文章を解析して何を話しているかを把握したりすることが可能なのだ。

マイクロソフトの手がけたAIチャットボット「りんな」。口調はだいぶ砕けている

こうした自然言語理解の結果、人間とコンピュータの間のインタフェースとしてAIを使う試みが進んでいる。ユーザーの目に留まりやすいものとしては、グーグルの「OK Google」や、アップルの「Siri」、マイクロソフトの「Cortana」といったモバイルOSが搭載する音声アシスタントが代表格だが、その他の分野で特に進んでいるのがチャットサービスだ。昔から「人工無脳」とよばれる半ばジョークプログラムともいえるチャットプログラムはあるが、AIを使ったチャットはもっと自然なやりとりが可能だ。

日本語で会話できるAIチャットボットとしては、マイクロソフトがLINE上で展開している「りんな」が代表格といえるだろう。女子高生をモデルとして、ユーザーが入力した文章を理解し、自然な文体(やや砕けすぎているが……)で返せる様は、人工無脳とは明らかに次元の違うパワーを体感させるものになっている。