モノづくりは信頼関係、妥協してもしょうがないでしょう?(笑)

これだけの苦労をしても、巣や傷のある「不良品」が発生するとのこと。見学した工場にも、数か所に「不良品」の山が見られた。巣や傷は目視でチェックし、傷などがあった場合はマジックで囲んで「不良品」にするというが、実際に不良品を手にとって確認しても、一瞬見ただけでは傷には見えないレベル。

「このレベルだったら製品化しても問題ないのでは?」と質問した筆者に対し、及川氏は「モノづくりは信頼関係で成り立っています。こういったところで妥協してもしょうがないでしょう?」と笑って答えた。職人のこだわりと、南部鉄器 極め羽釜の高い製品レベル納得した瞬間だ。

工場の数か所に積んであった不良品。現在、不良品の発生率はだいたい3~5%ほど。しかし、内釜を作り始めた5年前は、なんと60%近い不良品を出したこともあったという

どの不良品も、素人目には傷とはわからない。この程度の傷でも「不良品」とする品質へのこだわりに驚く

傷だけでなく、切削後の重量も重要。1.8kgの製品に対し、20gまでの誤差しか認められていない。及川氏ができたばかりの釜をハカリに乗せたところ、重量は「1799g」。誤差は1gしかなかった

工場見学の後は、南部鉄器 極め羽釜 NW-AS10型で炊飯したご飯を試食。もちもちと甘みのある安定したおいしさ。先ほど体験した恐ろしいほどの手間暇と、こだわりによって作られた味だと思うと、一層美味しく感じられた