切削作業でさらなる歩留まり

先述の通り、便宜上「無駄」と書いたものの、これらの素材はもちろん再溶解して再利用される。再利用において問題となるのは、「切削作業」によって削られた素材だ。切削作業は、文字通り鉄の釜を「削る」ことで形を整える。この作業では、摩擦と摩擦熱を低減するために、油を使用する必要があるのだ。削りカスに大量の油が混じるため、極め羽釜への再利用はできなくなる。

ちなみに、押し油などの余分なパーツを外した「切削前の内釜」の状態で、重量は約7kg。完成時の内釜重量は1.8kgなので、釜一個につき約5.2kgもの鉄が再利用できなくなることになる。

ブラストにかけて、汚れを落とした内釜。この時点では表面はデコボコ。そして、まだ特徴的な「羽根」の造形は見えない。すでに釜に近い形にみえるが、この時点で重量は約6.6kg。製品の1.8kgにはまだ遠い

【左】パーツをカットした「バリ」を、職人が手作業で削り取る作業。【右】「複合機」とかかれた切削用マシンで削りだし。切削マシンは「釜の内側を削る」用に一台、そして「釜の外側を削る用」に一台、別のものが用意されている。これまでは2台の切削マシンを使用していたが、新しい内釜は特徴的な羽根の形をしているため、羽根の削りだし専用に、さらにもう一台のマシンを使う

2台の切削マシンで内と外を削りだしたあと(写真左)、さらに3台目の切削マシンにかけて「羽根」の形を作り出す(写真右)。そして内釜の形は完成。従来よりも一工程、手間が増えている

【動画】大量の油をかけながら切削。このため、削りカスを再利用するのが難しい
※音声が流れます、ご注意ください

工場に点在する大量の切削による削りカス。一個の内釜を切削するごとに、だいたい5.2kgのカスが発生する計算