これに対して、日本の家電メーカーは、あくまでも日本中心の手法を貫いた。アジア、中国地域には生産拠点を置き、そこで生産を行う体制を構築してはいたものの、海外生産拠点では、あくまでも日本向けの生産が中心だったり、日本でヒットした製品を海外へと展開する戦略を軸としていたため、これを海外で生産、海外ニーズを取り込むことは後回しとなったり、といった状況が見られた。
長年にわたって、日本で成功した製品は、海外でもヒットするという誤った認識が蔓延していたことも、海外展開の遅れにつながった。
パナソニックは、2005年から中国・上海に中国生活研究センターを設置し、独自の生活研究をベースに、中国のユーザーニーズに対応したり、機能を割り切った製品を市場に投入したりといったことを開始。従来から発売していた幅60cmの冷蔵庫が、約3割の家庭には置けなかったことを知り、これを55cmにすることで販売を拡大するといった成果もあげてきたが、主流となる低価格帯製品の展開には遅れ、市場シェアは限定的ともいえる状況だ。パナソニックの世界シェアは、エアコンが約9%、洗濯機は約6%、冷蔵庫は約3%だが、その多くは日本市場での実績がベースとなっている。
海外で低下していった価格競争力
そして、コモディティ化した家電製品は、グローバルでは低価格化が進展。また、家電製品の普及率が低く、成長が見込まれている新興国市場においてもやはり低価格製品が普及戦略の中心となるなかで、国内事業にこだわる日本の家電大手は、付加価値モデルが中心の事業構造となっており、こうした動きに追随できず、価格競争が進展するなかで収益を悪化させる事態に陥った。
これに対して、サムスンやLG電子、ハイアールは、コモディティ化した製品を相次いで投入している。これらのメーカーに共通しているのは、世界共通で展開できるプラットフォームを用意して、その上で各国ごとの仕様を実現するという構造を採用していたことだ。これが低価格品の販売台数が増加しても、利益率の確保につながっている。大量部材調達、大量生産のメリットが生かせる構造を敷いていたことが、日本の家電メーカーとの違いだったといえる。