そして、いよいよ原子炉へ。まず案内されたのが原子炉上部を確認できるガラス部屋だ。現在、原子炉は停止しているので、炉最上部のフタがはずされており、なみなみに注水されている状態が確認できた。原子炉横の使用済み燃料プールも満水だった。

この原子炉を覆う建屋についてだが、中越沖地震後に耐震強化が施されたそうだ。屋根部分は鉄骨を増やし、クレーンのレールも耐震性を高める工夫がしてある。さらに「原子炉建屋水素処理設備」が建屋内に多数設置されている。技術的な解説は省略するが、これは発生した水素を再結合して水に戻す装置。福島原発事故の際、水素爆発により建屋の屋根が吹き飛んでしまったが、その教訓から導入された設備だそうだ。

注水された原子炉

原子炉建屋水素処理設備

つまり、柏崎刈羽原発は、中越沖地震と東北地方太平洋沖地震、2つの大震災の教訓により準備が進められているといってよい。このあと、「原子炉格納容器」内の見学もさせていただいたが、そこにも制震装置が数多く見られた。

原子炉格納容器内の様子。原子炉から4本のパイプが伸び、タービンに蒸気を送る

原子炉を支える部分にも制震装置が目立った。黄色のマークは、中越沖地震後に設置されたことを示している

「最後は人」……人の力を高めることが大切

最後にタービン建屋に案内された。原子炉で生み出した蒸気がタービンを回転、約70mの軸棒を回し、その動力が発電機に伝わり電力を生む仕組みだ。以前、LNG火力発電を見学させていただいたが、それよりもひとまわり大きなタービンという印象を受けた。ちなみに見学させていただいた6号機、7号機は135.6万kWの発電能力があり、1~5号機は110万kWとなっている。

見学のあいだ、林副所長が随時付き添ってくださったが、「あらゆる場面を考えて」という表現が目立った。2016年の電力小売自由化にともない、東京電力職員の話を聞くことが増えたが、多くの人が似たような表現を使う。“安全神話”はもう東電には巣くっていないのだなと感じた。そして林副所長の「最後は人、人の力が重要」という言葉が強く印象に残った。

約70mの軸棒を回すタービン。写真では見えないがこの奥に発電機がある

東京電力ホールディングス 柏崎刈羽原子力発電所 副所長 林勝彦氏