続いて敷地内のもっとも北側、つまり原発と海岸の境界線へとバスは進んだ。福島原発事故発生は、想定以上の高さの津波が堤防を越え、予備発電施設が浸水し機能を失ってしまったのが主因だった。海と発電施設の“境”がどのようになっているのか、至極気になるところだ。
そこには見上げるほどの防潮堤が築かれていた。この防潮堤は海抜15mの高さになっており、津波による浸水を防ぐ。20~50mの深さまで杭を打つことで強い水圧にも耐える設計だというが、それでも津波が越した場合、防潮堤下部の排水口から海水を排出できる仕組みが採用されている。
これ以外にも、沖合数百メートル先に防波堤が存在していたが、こちらは発電所に隣接する港湾機能を確保するためのもの。津波を防ぐための設備ではないとする。
中越沖地震後に進められた免震重要棟の建設
福島原発事故の際、耳目を浴びたのが「免震重要棟」という施設だ。これは緊急時に司令塔として使えるように、震度7クラスの地震が発生しても揺れを1/3~1/4ほどに低減できるようになっている。中越沖地震を受けて建設され始めたもので、福島原発事故の際、この施設がなかったら事態はもっと悪化していただろうといわれている。柏崎刈羽原発にも事務所に隣接する形で設置されている。
この免震重要棟の中核となるのが緊急対策室だ。正面に200インチのモニター2台がかけられ、発電プラントの情報を視認できる。中央の一部にはガラス張りの本部室が設置され、緊急時の対策について意志決定する。
緊急対策室には「ホットライン室」が隣接され、柏崎市や刈羽村、柏崎警察署などといった関係各署と意思疎通が行えるようになっている。各連絡先にはメタル回線による直通電話、衛星による無線電話が用意され、不通になることを防ぐ体制を整えていた。さらに、アクシデント時の手引き書も保管され、不測の事態が発生した際に対応できるようにしている。