AndroidアプリのChrome OS対応は大きなインパクトに
筆者が3つ目に注目するのは、Googleの「Chrome OS」が動作するコンピュータで、Androidアプリが動作するようになる、という点だ。
Chrome OSとは、モバイルデバイスよりも高性能なコンピュータ向けのOSだ。特に11インチから14インチ程度のディスプレイを持つノートブック型のコンピュータ、Chromebookでの活用が中心だが、より小さなタブレットから、60インチのテレビに至るまでをカバーする。
Windows搭載のネットブックは300ドル程度だが、LinuxとGoogle Chromeが核となるChrome OSを備えたChromebookは、これよりもさらに安い100ドル台で、十分な体験を実現できるデバイスが手に入る。
そのChromebookだが、米国市場において、販売シェアでMacを上回るようになった。調査会社IDGによると、直近の2016年第1四半期、Macの販売は176万台だったが、Chromebookは200万台を販売したという。AppleはiPad ProをWindowsの代替にしようとしているが、GoogleのChromebookは既に、PCの代替としての成果を上げている。
そんなChrome OSで、Androidアプリが動作するようになる。Google I/O 2016での発表は、開発者にとっても、Chromebookを導入したい家庭や学校、企業にとっても、非常にメリットの大きな発表だと考えている。
例えばソーシャル系のモバイルアプリを、大きな画面のブラウザに表示したウェブ解析の画面とともに開いて使用する、といった業務の中での活用も考えられるし、スマートフォンを持っていない生徒が、Chromebookから、Androidの膨大なリソースを活用した学習を行うこともできるだろう。
Microsoftは、Windows 10で、モバイルとデスクトップのアプリケーションを統合した。Appleは、MacとiPhone・iPadのOSの統合はない、と度々発言している。こうした中でのChrome OSのAndroidアプリ対応は、モバイルデバイスとパソコンをうまく統合し、パソコン側に新たな価値を持たせる「成功事例」を作り出すことになると考えている。特にMicrosoftにとっては、Chrome OS搭載のコンピュータがより大きな脅威となるだろう。
今回のGoogle I/Oは開発者向けということもあり、Android NやAndroid Wear 2.0、Googleアシスタント、Daydream、ChromeOSといった発表内容をすぐに体験できるようになるわけではない。また開発者がこれらの新しいプラットホームに対応したアプリを作ることで、我々の体験が新たなものへと進化することになる。Googleが示した世界最大のモバイルOSの方向性と、これを受けたアプリの進化に、引き続き注目していくべきだ。