ここで一つ、Appleはデバイスメーカーである、という点を思い出しておこう。
デバイスメーカーは、自社製品の販売台数拡大が、そのまま収益の拡大につながる。販売価格の高い製品が売れた方が、一台あたりの利益は大きくなる。しかし、安いデバイスが、よりたくさん売れた方が、手元に残る利益は拡大する。
それが、iPhoneで成功したAppleの現在の姿である。
もしもiPad ProがWindows PCのリプレイスを本当に実現するのであれば、Macの台数を大幅に上回る販売台数を稼ぎ、結果的により多くの収益を手にすることになるだろう。タブレットという日常のコンピューティングを引き継げるデバイスが、iPhoneのように年間2億台のビジネスなれば、Appleは第二の栄華を手にするはずだ。
その思惑があるならば、現状のiPadの売れ行きは完全に逆行しているし、Macはよりハイエンドに、プロ向けのデバイスとしてそのキャラクターを一新させる必要がある。その新たなキャラの一端を見せているのが、CoreM搭載ながら15万円以上からという価格設定のMacBookであり、多くの人々が期待する新しいMacBook Proの刷新、というわけだ。
松村太郎(まつむらたろう)
1980年生まれ・米国カリフォルニア州バークレー在住のジャーナリスト・著者。慶應義塾大学政策・メディア研究科修士課程修了。慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)、キャスタリア株式会社取締役研究責任者、ビジネス・ブレークスルー大学講師。近著に「LinkedInスタートブック」(日経BP刊)、「スマートフォン新時代」(NTT出版刊)、「ソーシャルラーニング入門」(日経BP刊)など。ウェブサイトはこちら / Twitter @taromatsumura