これほど大規模な再開発に対して需要があるのかどうかという疑問が生じるが、森ビルには勝算がある。それは現在開業している虎ノ門ヒルズの営業状況がきわめて良好だからだ。 虎ノ門ヒルズはオフィス、住宅、ホテル、カンファレンスからなる複合施設だが、約100,000㎡(約30,000坪)のオフィスエリアはほぼ満室稼働、住宅エリアの分譲は竣工時に完売、賃貸の稼働率は90%以上、ホテルは宿泊単価が高いのにもかかわらず約85%の稼働率、カンファレンスは開業以来2年で800のイベントが開催され、のべ23.5万人の来場があった。つまり、虎ノ門ヒルズ1棟では、さばききれない状態といえるのだ。
東京オリンピックによる需要増に期待
加えて東京オリンピック開催によるグローバル需要の取り込みを見込んでいる。事実、辻社長は「ビジネスタワーとレジデンスタワーを2019年に竣工するのは、東京オリンピック・パラリンピック開催に間に合わせたいため」と、その野望を隠さない。オリンピック開催までの期間は海外からの需要を取り込む好機であるうえ、虎ノ門が東京・港区という好立地にあることも拍車をかける。というのも、日本には約3,100社の外資系企業が進出しているが、そのうちの788社が港区に拠点をかまえ、外国人居住者が18,000人以上も集まっているからだ。千代田区で約2,600人、中央区で約5,600人であることを考えると、港区にいかに外国人居住者が集まっているのかがわかるだろう。
日本資本の重厚長大な巨大企業は大手町や丸の内に集中しており、そうした企業が簡単に本社機能を虎ノ門に移すとは考えにくいが、海外からの進出企業やベンチャーに対し、オフィスを提供しやすい条件にあるのは確かだ。