Appleは「サードパーティーを潰そう」という意志はなさそうに見えるが、ユーザーが自社のデバイスで、どんなアプリを楽しんでいるか?については敏感だ。もしそのアプリがiPhone等の魅力を高めると判断すれば、App Storeで欲しいものを積極的にはダウンロードしない人に対して、自社の標準アプリとして提供するようになる。

「メモ」についても、強化すべきアプリとして、発展の道が与えられたわけだ。

スマートフォンを使う際、誰にも送信しない、どこにも共有しない、自分のための情報のメモは不可欠な機能だった。本来であれば、「メール」アプリの次ぐらいに力を入れてしかるべきだったと思うが、なぜ今なのか。これについての予想は後述することとする。

iOS標準のメモには、チェックリスト機能や手書きスケッチ機能が追加された。iPad Proでは、Apple Pencilを用いて、筆圧感知機能を生かしたスケッチを実現できる

さて、iPhone、iPad向けのiOS 9に搭載された「メモ」は、iPhoneの様々な機能を駆使してメモを作り上げるというシーンを想定できる。

「メモ」そのものの機能としては、箇条書きや手書きスケッチ、写真の追加といった、高機能アプリとしての性能が備わった。加えて、各種アプリの共有メニューから、そのコンテンツを「メモ」に追加することができるようになった。

例えば地図のスポットやWebページ、写真などを他のアプリで見ている際に、共有ボタンを押してノートを選ぶだけだ。すると、追加した内容のタイトルとサムネイル画像がノートに入るという仕組みになっている。今まで編集していたメモにも追加できる点は、他のノートアプリよりも優れている。

例えばパーティーの準備の場合、まず箇条書きで準備のチェックリストを作り、買い物の店情報を「マップ」アプリから追加し、料理のレシピのWebページも「Safari」から追加する。連絡先を追加しておいてもよいだろう。

「メモ」で機能的に不満なのは、メモ自体の共有が貧弱である点と、カレンダー連携がない点だ。

Evernoteでは、公開リンクを送ることで、レイアウトそのままの内容をWebブラウザで見せ、Evernoteユーザーであればそのまま取り込むことができる。しかし「メモ」では、メールやメッセージの本文に単純にコピー&ペーストしただけの状態で送ることになる。

また、カレンダー連携については、iPhoneの標準アプリにリマインダーが存在していることもあるが、せっかくチェックリストを作れるなら、イベントと紐付けたり、メモ自体が通知を送ってくれたりすると便利だと思うのだが……。共有機能はとにかく、メモに日付の概念は入れるべきだと思う。その理由も後に述べよう。