バーチャルウォールが進化
ルンバ980では「バーチャルウォール」という、赤外線で侵入禁止エリアを仮想的に作り出す付属品も一新されている。従来のものより小型で、縦長のスリムな形状になり、見た目もスタイリッシュになった。見た目が変わっただけでなく、直径1.2mの侵入禁止エリアを作る「ヘイローモード」を追加。ペットの水飲み場に設置することが想定されているようで、ペットを飼っていない筆者には使用する機会がなかったが、飼っている家庭では歓迎されるだろう。
かなりコンパクトで目立たなくなった新しい「バーチャルウォール」。重量も軽くなっているせいか、設置の仕方によっては、レーザーを発していない面からルンバが突進して動かしてしまうことも……。次モデルでは改良してほしい |
個人的に、ひそかに気に入ったのは、ルンバが自分の位置を音でお知らせしてくれる機能だ。スマートフォン用アプリに用意されたボタンを押すと、ルンバ本体が音を鳴らして応答してくれるという原始的なものだ。とはいえ、エラーで止まってしまい、自力で充電台に戻れず行方不明になったルンバを捜索するには便利。バッテリー切れのせいで止まってしまった場合には使えないが、より広い範囲を、複数の部屋にわたって掃除できるルンバ980にこそ必要な機能だといえる。
ルンバが部屋の間取りを覚えてくれたら
ルンバ980がSLAMを搭載し、スマートフォンから操作できるようになったのであれば、バーチャルウォールのような物理的な装置を設置しなくても、ルンバが作成した地図をもとにスマートフォンアプリから侵入禁止エリアを設定できるといった機能を期待したいところ。ルンバが自分で作った地図をもとに間取りをある程度記憶してくれて、ユーザーがそれを参照しながら外出先からも設定できると、ずっと便利になると感じる。
ルンバはこれまで、どちらかというと、体当たり的な動きをしながらも、センサーで部屋の状況を検知、的確な判断をして地道に掃除をするという職人のような"男気"を感じる製品だった。それが、新しいルンバ980では、はじめから賢くて"紳士的"になったという印象だ。これまでのルンバは人工知能という頭脳を持ちながらも、インプットする情報は「センサー=触覚」に頼っていた。今回、新たに「カメラ=視覚」を得たことで、より迅速かつ正確に判断できるようになったといえる。
ルンバ980は特にSLAMの搭載が注目された新製品だが、「ルンバがナビゲーション方法で大きな路線変更を図った」という見方より、「従来のルンバの弱点を補完するためにSLAMが導入された」という見方のほうがふさわしいのではないかと、実際に使ってみて思った。
見た目こそ似通っていても、ロボット掃除機は「掃除機がロボットになったもの」と「最初からあくまでロボット」という2つに大別される。ルンバは明らかに後者であるということを、今回の新製品でも改めて痛感した。