「3カ月間ロイヤリティーなしルール」のゆくえ
料金はまずまず妥当、(日本では)楽曲数の不安はあるものの人手をかけたリコメンド機能は興味深く、AAC 256kbpsというフォーマットもサービスのコンセプトに照らせば納得できるということで、後発の聴き放題ストリーミングサービスとしてはいい線を行っているのではないか……そうまとめて執筆を終えようとしていたところ、1本のニュースが飛び込んできた。著名アーティスト、Taylor SwiftによるApple Music批判だ。
詳細は他の記事を参照いただくとして、この批判がサービス開始前に行われたことは、Appleにとってむしろ幸運だったのではないだろうか。3カ月間の無料トライアル期間内はロイヤリティーが支払われないという契約は、作品発表ペースが一律でないアーティスト側には明らかに不利だ。
定期購読者を獲得するためにはトライアルが必要、その経費負担をアーティスト側にも求めるというのがAppleの言い分なのだろうが、それは疑問だ。たとえば、5年にアルバム1枚程度という寡作のアーティストがたまたまApple Music開始直後に新作をリリースしたとしよう。話題性も手伝い2カ月はヘビーローテーションとなるが、その後急に聴かれなくなったとしたら……貨幣価値で表現するのは難しいが、相当なダメージであることは確かだろう。
と、遅まきながら問題点に気付き、これを掘り下げるつもりでいたところ続報が。Appleのインターネットソフトウェア/サービス担当上級副社長のEddy Cue氏が、無料トライアル中でもアーティストに対価を支払う旨のツイートを行ったのだ。Taylor SwiftのメッセージがTumblrで公開された翌日のことであり、その対応の速さは素直に評価できる。この発表がWWDCの前に行われていれば、Apple Musicの期待値ももっと上がっただろうに。惜しい。