Macの体験を新たな高みに、気になるゲーム機としてのMac
ここ数年、OS Xの新版の発表は新名称決定に至るまでの経緯をジョークで紹介するのが恒例になっている。
最初から最後までジョーク一色だったので、「OS X El Capitan」という名称に決まった本当の理由はわからず終いだったのだが、El Capitanというのは、ヨセミテ渓谷内にある巨大な一枚岩で、ロッククライミングの名所として知られる。
昨年のYosemiteから今年のEl Capitanという流れは、Leopard (Mac OS X 10.5)からSnow Leopard (同10.6)のような変化を思わせる。つまり、大きな進化の後の、それを磨き上げるようなアップグレードだ。実際、昨年のYosemiteがフラットデザインを採用し、iOSとの統合を進める大きな変化だったのに対して、El Capitanは「体験」と「パフォーマンス」を強化・改善のポイントとしている。
体験というのは実際に使ってみないことには良さを判断しづらい。そのためか、今回Federighi氏は言葉で説明するのではなく、最初からデモを通じてEl Capitanの体験を伝えた。見失ったカーソルを見つける新しいジェスチャー、自然な言葉を使ったSpotlight検索、フルスクリーン表示で2つのアプリケーションを並べて表示できるSplit View、分割表示を含めて柔軟にデスクトップをコントロールできるようになったMission Controlなど、次々と新機能を披露した。
自然な言葉で検索可能、「無視してしまったPhilからのメール」という検索で結果がずらりとあらわれて会場から失笑。ちなみにPhilというのはAppleのシニアバイスレジデントの1人であるPhil Schiller氏 |
見た目はシンプルに、より機能的にデスクトップをコントロールできるようになったMission Control、デスクトップの追加でMission ControlからSplit Viewを作成することも可能 |
パフォーマンスについてはシステム全般におよぶチューンナップで、アプリケーションの起動速度が最大1.4倍、プレビューでのPDF表示が最大4倍というような高速化を実現する。加えて、iOSに採用されたグラフィックスAPI「Metal」がOS Xにも組み込まれる。レンダリング性能が最大50%増、レンダリング効率性が最大40%増。3Dゲームや、Adobe製品のような処理性能を必要とするアプリケーションがよりスムースかつリッチに動作するようになる。
Metal対応によってユーザーインターフェイス(UI)のドローイングエンジンがスムーズに動作するようになり、AdobeのIllustratorではコンテンツをリッチかつインタラクティブに表現するUIが可能に |
興味深いのは、ゲーム機としてのMacの将来性だ。モバイルゲームのプラットフォームとしてiOSは有望であるため、昨年のiOSへのMetal導入はゲーム開発者の関心を集めた。しかし、PCゲームのプラットフォームはWindowsが最大勢力だ。iOSで証明したMetal効果と、iOSからMacへのハロー効果を武器に、Macはゲーム市場に食い込めるだろうか。次世代のApple TVでは専用アプリやゲームを開発できるようになるという噂もあるだけに、OS XへのMetal導入に対するゲーム開発者の反応が気になる。