Watson活用、どのような応用事例がある?

開発プラットフォームとしてWatsonの魅力が向上したことがわかったが、多くのエンドユーザーが気にするのは「実際にこれでどういうメリットがあるか」ということだろう。

現在ソフトバンクと日本IBMが国内で注目している分野は「ヘルスケア」「教育」「金融」の主に3つで、それぞれでのサービス開発や提携を進めているようだ。ヘルスケアでは先ほども紹介した医療診断機能でパーソナルドクターやヘルスアドバイザーのようなものが期待できるが、これを携帯電話と組み合わせれば他社とのサービス差別化が可能だろう。

Watsonを使ったサービスの応用事例。ヘルスケア向けの医療コンシェルジュやレシピ提案はすぐにでもソフトバンクのサービスに統合できそうだ

また先日はWatsonとミシュランで星を獲得したレストランのシェフが共同で新作料理を披露するイベントが実施されたが、これを健康食のレシピ提案に使えばヘルスケアの応用例として期待できそうだ。このほか、教育分野では個々の学習進度や志向に合わせたパーソナライズされた学習プログラムの提示が可能になり、さらなる学習効果の高さが期待できる。

Watsonでパーソナライズされた学習プログラムの提示が可能に

また5月19日の発表会の壇上では紹介されなかったものの、金融向けサービスも柱の1つとなっている。わかりやすいのは金融ポートフォリオのデータを経験学習としてひたすらWatsonに入力し、あとはリアルタイムで株や投資先のお勧め情報を個別提案するサービスあたりだが、実際に日本で展開が期待される事例はどちらかといえば「CRM」のような顧客対応サービス拡充にあるようだ。

具体的には今年2月に三菱東京UFJ銀行4月に三井住友海上とのWatsonでの提携が発表されており、ここでは過去のクレーム案件や顧客対応をWatsonでデータベース化し、コールセンターでの顧客対応を効率化するシステムに関する話が載っている。実際にはこれ以外の応用事例も検討しているとみられるが、まずは情報が分散しやすく、素早く適切な対応が要求されるCRM事例に絞ったのではないか。

接客対応という意味ではロボットの「Pepper」との連動で、自然言語解析を使ったパーソナライズされた接客システムへの応用というのも発表当初は取り沙汰されていたと記憶しているが、こうした仕組みの構築はまだ少し先の話になりそうだ。