LIFEBOOK GH77/Tには数々の工夫が、随所に盛り込まれている。実際、メカニカル設計に取り組んだ三原氏は、「かなりやり尽くした感がある」と笑いながら語る。
「ノートPCの場合は、部品のレイアウトは、平面上に当てはめていくのが一般的。LIFEBOOK GH77/Tでは、初めて三次元的なレイアウト手法を用いた。なにが正解かがわからないなかで、手探りで最適解を求めていった。その成果が発揮できている」と自信をみせる。
LIFEBOOK GH77/Tのディスプレイ部を本体に置いた場合、ひとめ見たスタイルは、オールインワン型のデスクトップPCに見える。実際、家ナカでの利用を想定したコンセプトであり、ディスプレイ部をとに持ち出して利用できないということを考えると、その活用範囲は、デスクトップPCに通じるものがあるともいえる。 そして、LIFEBOOKというものの、"ブック"の形状はしていない。むしろ、ノートPCのブランドである「LIFEBOOK」よりも、デスクトップPCのブランドである「ESPRIMO」の方が適しているのではないかとも感じるほどだ。
これに対して、富士通の河野氏は、「実は、ホームコンピューティングに向けた新たなブランドを付けるべきとの議論もあった」というエピソードを明かしながらも、「もともとはノートPCの開発部門が担当していたこと、使っている技術がUltrabookなどで培ったものであることなどが、LIFEBOOKのブランドを使用した理由」だと説明する。
これまでの話からもわかるように、LIFEBOOK GH77/Tには、ノートPCの技術がふんだんに使われている。そして、LIFEBOOK GH77/Tの生産も、ノートPCの生産拠点である島根富士通で行っている。
ただ、LIFEBOOKのブランドを付けている限り、外に持ち出して利用したいという思いもある。これは、今後の進化のなかで、こうした用途も想定していると前向きに捉えておきたい。
GHシリーズの第1号製品となるLIFEBOOK GH77/Tの開発の狙いは、「IoT時代に求められるホームコンピューティングの理想の形」であり、「コンピューティングとUI(ユーザーインタフェース)を分けた新たなコンセプト」の実現であった。
「コンピューティングとUIを切りわけることで、コンピューティング部分の大きさを気にしなくて良くなるという新たな開発手法が導入できる。そして、それは家ナカの利用シーンを広げるための試みにもつながる。今後の家ナカPCのカタチは、こうしたものになっていくという提案のひとつ」と、富士通の細川氏は語る。
IoT時代においては、大量のデータ処理が求められることになるだろう。それに求められるコンピューティングパワーを持つ本体と、実際に操作するディスプレイ部を切り分けた発想は、こうした環境に対応した家ナカPCを実現する近道になるというわけだ。
LIFEBOOK GH77/Tは、1月23日の発売以来、すでに3カ月を経過した。
「購入していただいた方からは好評。家ナカでの新たなPCの使い方を実感したという声も出ている」と細川氏は手応えを示す。とくに、量販店店頭で、縦置きでディスプレイ部をドッキングさせて展示していると、多くの人がそれの形状に驚いて立ち止まるという。
「あえて課題をあげるとすれば、ディスプレイ部を縦置きした際に、効果的な利用提案ができていない点。ブラウジングやOfficeソフトだけの利用だけでなく、新たな提案をしていく必要がある。これはパートナー企業と連携しながら発掘していきたい」(河野氏)とする。
新たな時代の家ナカPCの提案は始まったばかり。LIFEBOOK GH77/Tで始まった新たなPCの「カタチ」がどう進化するのか。これからにも注目したい。