富士通は、新たに投入した「LIFEBOOK GH」シリーズを、「IoT時代に求められるホームコンピューティングの理想の形を目指したもの」と定義する。今後、家庭内に散在することになるであろう数々のIoTデバイスをまとめて管理し、自律的に、そして安定的に動くコンピューティングを担う役割を視野に入れて開発されたのが、LIFEBOOK GHシリーズというわけだ。
その第1弾となるのが、「LIFEBOOK GH77/T」。「家ナカ」利用のコンセプトを具現化するために、本体とディスプレイ部を分離。世界最高速のデータ転送技術を実現した独自の無線ディスプレイ技術を採用することで、新たなPCの「カタチ」を具現化してみせた。
LIFEBOOK GHシリーズへのこだわりを追ってみた。
「家ナカ」利用を極めた新たなPC
富士通が発売した「LIFEBOOK GH77/T」は、「家ナカ」利用を極めたPCと位置づけられる製品だ。
15.6型では世界最薄となる約9.8mm、かつ世界最軽量となる約980gのディスプレイ部は、富士通独自の無線ディスプレイ技術により、本体から分離して利用可能。用途に応じてTablet Style、PC Style、Board Styleの3スタイルで使えることが特徴となる。
大画面・薄型・軽量を備えたディスプレイ単体を持って、家の中の自由な場所で利用。一方、リビングなどに据え置く本体では、Core i7搭載による高性能なコンピューティング能力を実現。この機能を画面表示の遅延や劣化といったことなく利用することができるという、新たな家ナカPCのスタイルを提案している。まさに、これまでにはないユニークな使い方ができるPCが登場したといえるだろう。
どんなスタイルのPCが求められるのか?
実は、LIFEBOOK GH77/Tの開発が始まった経緯もユニークである。というのも、LIFEBOOK GH77/Tは、15.6型のオールインワン型クラムシェルノートPCの開発部門からの提案によって、開発がスタートしているからだ。
同社の製品開発の基本スタイルは、マーケティング部門が市場調査に基づいて製品コンセプトを固め、それが開発部門に持ち込まれ、製品化が進められるというものだ。それに対して、LIFEBOOK GH77/Tは「プロダクトアウト」の形で、開発部門主導型によって、製品化が進められたものといえる。
「今後、家ナカで利用するコンピューティング環境を考えた場合、現行の15.6型ディスプレイを搭載したクラムシェルのノートPCや、オールインワンPCだけではすべてのニーズを網羅できないはずだと考えた」。富士通 パーソナルビジネス本部クライアントプロダクト事業部第一技術部マネージャー・河野晃伸氏は、開発経緯を振り返る。
では、どんなスタイルのPCが求められるのか。議論はそんなところから始まった。
議論のなかで生まれてきた製品コンセプトが、"ディスプレイ部を取り外したら、もっと手軽に家のなかで利用できるのではないか"というものだった。ディスプレイ部を持ち運んで、家のなかの好きな場所で、好きなスタイルで利用できれば、これまでのA4ノートPCにはない手軽さが実現できると考えたからだ。
だが、その一方で、既存のA4ノートPCで実現している15.6型という大型ディスプレイの採用や、光学ドライブの搭載、そして、Core i7搭載による高性能は譲らないことを前提としていた。
しかし、そうした基本姿勢を維持しながら、ディスプレイ部を外すという構造の実現は至難の技だった。当初の発想では、光学ドライブやCPUなどPC本体としての機能はディスプレイ部に持たせようと考えていたからだ。
「取り外したディスプレイ部に高性能CPUを搭載すれば、発熱量が高まり、その熱対策も必要になる。またドライブやインタフェースを搭載しても重量は増加する。当初の試算では、ディスプレイ部だけで1.5kgもの重量になっていた」(河野氏)という。
大きくて、重くて、厚いディスプレイ部では、想定した「手軽さ」は成しえない。ここで最初の壁にぶち当たったのだ。