総務省の方向性を考察

いったい、これで総務省はどういう方向性を考えているのでしょうか。ここからは、あくまでも筆者の予想です。

まず、総務省は、MNOに対して端末販売の比率を下げ、通信料金を下げるように仕向けていると思われます。そのための施策が「SIMロック解除の義務化」と「MVNOの推進」なのです。

SIMロック解除の義務化と表現されていますが、これは、裏を返せば、「SIMフリー端末の受け入れ義務化」と同じです。SIMロックを解除させ、SIMフリー端末にしたうえで、これを持ち込んで契約できるようにしろと言っているのです。これでSIMフリー端末の市場が成立するようになります。

以前は、どのMNOも自社で販売した端末だけでしか利用を認めていませんでした。MNOによる端末販売にはメリットがありますが、コストを上昇させ、結果的に通信料金を高止まりさせます。2010年のSIMロック解除ルールに合わせて、販売奨励金を使った端末の低価格販売が禁止されましたが、実際には、端末の割賦販売と毎月それを割り戻す「割引」に移行しただけです。端末の販売に事業者が多額のコストをかけている状態には変わりがありません。事業者が端末販売を減らせば、そのコストは利益となり、通信料金を安くすることが可能です。

だったら、MNOによる端末の販売を禁止すればいいじゃないか? と思われるかもしれませんが、官庁が指導を行う合理的な理由がありません。少なくとも端末はサービスを受けるのに必要なものであり、事業者がこれを販売することは禁止できません。

かつて、固定電話も、電話機は電電公社のみが販売できましたが、自由化により、メーカーが規格に準拠したものであれば、自由に製造して販売できるようになりました。このときも電電公社による電話機の販売までは禁止されませんでした。

そして、端末メーカーとMNOの関係は強固なままです。端末メーカーにも働きかけないと、MNOの端末販売比率は低くなりませんが、端末メーカーは、経済産業省の管轄なので、総務省はMVNOを使うことにしたのだと思われます。