1Gbps超を実現する「11ac」とは
ずいぶん長い前置きになってしまったが、第5世代無線LAN=11acの目的は「既存規格との広報互換性を保ちつつ、Gbps級の速度を実現する」ことだ。具体的には11~11nまでと互換性を保ちつつ、5GHz帯を使うことで高スループットを提供する。2.4GHz帯は帯域幅が狭いなどの事情もあって、後方互換性のためだけにしか使われない。11acは段階的な速度向上を目指しており、現行の「Wave 1」では1.3Gbps、将来登場する「Wave 2」では6.9Gbpsを目指している。
また、11acでは「チャネルボンディング」「MIMO」といった11nでサポートされた機能を拡張する形で高速化を果たしている。チャネルボンディングでは80MHz(11nでは40MHz)~160MHz、MIMOでは8x8 MIMO(11nでは最大で4x4)をサポートし、さらに変調方式の改良などを加え、Gbpsクラスの速度を実現しているのだ。
MIMOについては単に複数のアンテナで同時通信するだけでなく、複数のアンテナをそれぞれ別の機器ごとに割り当て、同時通信を可能にする「MU(マルチユーザー)-MIMO」をサポート。11nまではアンテナがいくつあっても同時に通信できる端末は1台だけだったが、同時に通信できる台数を増やすことで接続効率を上げ、体感のレスポンスを高める機能だ。
2014年のスマートフォンでのMIMO普及率は約6%どまり。これが2020年までには約20%まで伸びる見込み。iPhoneが2x2 MIMOをサポートすれば、iPhone人気が高い日本では50%超えもあるだろう |
11ac対応端末が増えてMU-MIMO接続が普及すれば、接続速度自体は現在と大きく変わらなくても、実際の通信効率は大幅に上がることになる。これは公衆無線LANなど大人数が利用するネットワークでは重要だ。
MU-MIMOとも関連してくる技術としては「ビームフォーミング」がある。これはアンテナから発信する電波の位相を制御することで指向性を高め、クライアント側にピンポイントでできるだけ高い電波強度を届けようというもの。電波の指向性が高まることで通信距離も改善するわけだ。
このように11acでは単なる速度の向上だけでなく、電波の利用効率を高め、ユーザーが快適に使えるような技術が増えている。これまで以上に快適な無線環境を実現するための総合的な技術が11acなのだ。