現代人として、地図の恩恵を受けたことがない人は、まずいないだろう。例えばPCやスマートフォンで、地図案内ソフトを少なくとも1度ぐらいは使ったことがあるはずだ。それから、車を運転する人ならカーナビを使う人が大多数だろう。そんな時、高い確率で利用されている地図データを製作している企業がある。それがゼンリンだ(画像1)。
例えばグーグルマップも日本の地図に関しては、実はゼンリンのデータが利用されている。日本エリアを拡大して外国が1つも映らないようにすると、右下にコピーライトとして同社の社名だけがグーグルと共に掲載されるので、それがわかるはずだ。ストリートビューのイメージがあるからか、グーグルマップはグーグル自身が地図データからルート案内のプログラムまですべてを自社で作っているようなイメージがあるが、そんなことはない。各国の大手地図製作会社と提携しており、日本エリアに関してはゼンリンが地図データを提供しているのである。
カーナビに関しても、ゼンリンの地図データを使った製品が実に多い。近年は、カーナビメーカーがさまざまなデータを複数の地図データ製作企業から購入して組み合わせて作るというスタイルが増えたため、一概にゼンリンのシェアが何パーセントという表現は難しくなっているそうだが、一時期は約70%を占めていたという。要は、ゼンリンは技術力も含めて日本の地図データ製作会社のトップ企業であり、世界でも屈指の企業なのである。
そんなゼンリンでは、全国から集められた地図データの入力や編集、管理といった作業を福岡県北九州市戸畑区の本社で実施しているのだが、今回、そこにお邪魔することができた(画像2)。そして、どのようにして地図が作られているのかを拝見させてもらい、またかつての地図製作の様子や実際にその時に使われていた道具を見せてもらったり、現在取り組んでいる最新技術なども取材もさせてもらったりしてきた。地図という生活に欠かせないインフラ中のインフラといえる情報が、どのように集められ、どのように編集され、地図案内アプリやカーナビとなっていくのか。それをぜひご覧いただきたい。