Iris ProがつないだVAIOとキヤノンの連携
こうした課題を解決するという観点から注目を集めていたのが、インテルのIris Pro Graphicsであった。
Intel Iris Pro Graphicsは、第4世代Coreプロセッサーファミリーに位置づけられるもので、プロセッサに直接組み込まれたグラフィックスアクセラレーター。インテル最強のグラフィックスプロセッサと位置づけられ、前世代のグラフィックスプロセッサに比べて2倍の性能を発揮するなどの特徴を持つ。
11月からダウンロードが開始された最新版のCinema RAW Development 1.3では、Intel Iris Pro Graphicsによる簡易高速現像に対応。24fps再生やファイル簡易出力を可能にした。
「これによって、ワークステーションや高性能デスクトップPCなどが不要になり、撮影現場にIntel Iris Pro Graphicsを搭載したノートPCを持ち込んで、4K Cinema RAWを高速現像し、その場で確認作業を行うといった作業ができる」(恩田担当課長)。
インテルとの協業によって、キヤノンが提案する4K映像の世界を、より加速するための環境が整ったともいえよう。
こうしたインテルとの協業を進めるなかで、キヤノンが注目したのが、VAIOが開発中のVAIO Prototype Tablet PCであった。VAIO Prototype Tablet PCはIntel Iris Pro Graphicsを搭載し、クリエイター向けの製品として開発を進めていたものである。
とはいえ、これまでのVAIO側の提案は、主にイラストレーターやフォトグラファーなど、静止画像を対象にした領域が中心。これらのクリエイターに対して、「デスク以外の第2の場所で、プロレベルの創作を支援する」ことを目的に、モノづくりを進めていたのである。例えば、フォトグラファーが、撮影した写真を撮影したその場で確認するといった用途が、想定した使い方のひとつだ。
だが、インテルを通じたキヤノンとの連携が進むなかで、4K映像を撮影、編集する世界においても、VAIO Prototype Tablet PCが、この市場をターゲットにできる可能性が出てきたのだ。
VAIO 商品プロデューサー/商品企画担当ダイレクターの伊藤好文氏は、「映像分野に展開するという点では、時期尚早ではないかと思っていた」と前置きしながらも、「Cinema RAW Developmentでは、データ量が少なく、PCで作業しやすいものになっていることも大きい。さらに、Iris Pro Graphicsの性能もチューニングによって進化を続け、VAIO Prototype Tablet PCでは、4K Cinema RAWを、最大24fpsでリアルタイム再生できる」とVAIO Prototype Tablet PCの映像分野における適性を強調する。
また、Adobe RGBカバー率95%以上の広色域ディスプレイの搭載に加え、「A4サイズのモビリティで、屋外でも編集素材を手早くチェックできる」と、4K映像分野におけるVAIO Prototype Tablet PCの利用シーンを想定する。
「VAIOと聞いて最初はびっくりした」と、キヤノン イメージコミュニケーション事業本部ICP第四事業企画部・恩田能成担当課長は笑うが、「Iris Pro Graphicsを搭載したAV向け製品がないというのが現状。そこで、注目したのがVAIO Prototype Tablet PC。現場に持ち込んで利用でき、それでいて必要とされる性能を持っている。こうした製品が作られていることに驚いた」と語る。
キヤノンは、2014年4月に、米ラスベガスで開催された世界最大の放送機器展「NAB 2014」においても、Cinema RAW Developmentをデモストレーションしたが、その際には高性能ゲーミングPCを用いていた。
「VAIO Prototype Tablet PCによって、モビリティをより追求でき、現場作業ができる。効率性を高めるという新たな提案ができる」(キヤノン・恩田担当課長)。Inter BEEのキヤノンブースで、VAIO Prototype Tablet PCを展示する企画は、とんとん拍子で決まっていった。