テレビ恐怖症と人間不信

井上:ワイドショーとかではなくて、バラエティも見なかった?

矢口:見なかったです。やっぱり私の名前もたまに出していただいたりしていた時に自分の中で私の顔を見たくなかったんですよね。

宮根:1年5カ月休んでいる間で、一番きつかったのはどんなこと?

矢口:1番きつかったのはやっぱり、自分のことを非難されるのは全然よかったんですけど、家族とか友だちとか、よく分からない報道ですごく中傷されているのを(違うと)言えないのが1番きつかったです。すごく迷惑もかけてしまったので、それだけは本当にしんどかったです。

宮根:お母さんは『ミヤネ屋』をよう見てくれてはるんでしょ?

矢口:そうですね。お母さんは一連の騒動のワイドショーとかは、たぶんほとんど。

宮根:お母さんの一言一言って自分の支えになりました?

矢口:そうですね。一番でした。しゃべるのもしんどい状況だったので。

宮根:うつ状態に近いような?

矢口:そこまで大きくはないですけど、たぶんそういう感じだと思います。

井上:そこまでいっちゃうと、「今後」というのはその時期はどういうふうに考えていたんですか。

矢口:何にも考えられなかったんですけど、芸能界無理かなって思いました。ここまで(復帰に時間が)かかってしまったのは、自分がちゃんと落ち着かなきゃいけないというのがあったので、こんなに長くなってしまったんですけど。

井上:ということは、一時期は芸能界を辞めようと思ったということですか。

矢口:そうですね。辞めてから何をしようか考えようかという感じでした。

宮根:芸能界を辞めようとおもったのは、騒動が大きくなって人に会いたくないということなのか、それとも1年5カ月も休んじゃって昔のようにパフォーマンスができなくなるんじゃないかっていう不安と。どちらが大きかったですか。

矢口:どっちでしょう…でもやっぱり、人間不信になったのは確かなんですけど、全員が怖いというか。仲間もどこまで信じていいのか分からない状態にまでいってしまったので。だから、一人で考えていたのがよくなかったと思うんですけど。

宮根:被害妄想的な?

矢口:そうです。全然、向こうからしたらそういう気はないのに、自分で被害妄想を感じて、とにかく誰とも会わないのが一番いいんじゃないかというふうになってました。

"激太り"と"貯金1億円"の報道

井上:たぶん、そのタイミングだと思うんですけど、激太り報道ってありましたよね。

矢口:今もそんなにシュッとしてないんですけど。これ(激太り報道の誌面)を見た時に私もかなりの衝撃を受けて、「やばい!」と思って。家にいてご飯を食べたりしているだけなので、家でできる運動を自分で考えて。部屋でフラフープしたりとかベランダで縄跳びをしてみるとか。

宮根:ほんで、痩せたんですか。

矢口:いや、ちょっとまだなんですけど…この時は相当たぶん太っていたので(笑)。(報道で)背中は押されました。やばいと思って。

井上:家の中に閉じこもりっぱなしというのもあるんだろうけど、ストレス的なものは?

矢口:それはたぶん違うと思います。暴飲暴食とかはしてなかったので、ただの運動不足だと思います。

宮根:僕らの仕事って体を動かさないとお金にならないじゃないですか。生活費はどうしてたんですか。蓄えはある程度あったでしょうけど。

矢口:基本的には貯金を切り崩してたんですけど、なんか私すごいお金持ちって思われてるみたいで。

井上:1億円貯金があるって書いてありましたよね。

宮根:あの時、「キーッ!」ってなったわ。

矢口:えー! 本当ですか(笑)。1億円なんて持ってません。その後「5億円騒動」も出たんですけど、もちろん持ってないですし。働かなきゃなという気持ちにもなっていました。芸能界じゃなく。アルバイトじゃないですけど、自分で何ができるんだろうっていうところまでなっていました。

井上:それぐらい金銭的には苦しかった?

矢口:困ってたわけじゃないんですけど、この先を考えたらゼロになっていくだけじゃないですか。

宮根:お母さんにキャッシュカードでおろしてもらってっていう生活をしてたわけ?

矢口:一応、貯金の方から使ってもらっていました。

宮根:1年5カ月の中で唯一の楽しみは?

矢口:えっ…楽しみですか。なんだろう…。DVD? あとは漫画の発売日とか。

宮根:でも、連日報道されていろんなことがあると、DVDや漫画で笑っても「えらいことになってしもうたな…」って繰り返すでしょ、やっぱり。

矢口:そうですね、基本的に考えない日はなかったです。

宮根:寝れました?

矢口:寝れました。本当に何もしてなかったんですが、自然に生活はできていました。