「タブレットの画面はパブリック」
また他の高校生は、スマートフォンの画面をプライベートだとすれば、iPadの画面はパブリックだった、とふりかえる。スマートフォンの画面は基本的には他人に見せず、自分だけが見るもの、という前提でお互いに使っている。そのため、他人のスマホの画面をなるべく見ないように気をつけるのが普通だ。
しかしiPadの画面は違っていた。Y-PLANを通じて他の高校生と議論をしたり、アイディアを出し合ったり、まとめたりする際には、頻繁にiPadの画面を見せ合いながら話を進めたそうだ。
フィールドワークで撮影してきた写真やビデオ、議論中のキーワードのメモ、まとめている最中のKeynoteのスライドなど、自分で創った情報をすぐにその場で見せながら的確に伝える。メンバーのアイディアを採用することになったら、みんなの前で画面を操作して、議論の結果をすぐに反映する。
iPadの画面が「パブリック」と答えた理由は、こうして画面をみんなで見ながら作業を進めていったという体験が、普段のスマートフォンと比較として、大きく異なっていたからだ。iPadを電子教科書や教育用のアプリを走らせるための「教材」としてではなく、議論をしながら問題解決のための「武器」として活用したことを、表すキーワードとなった。
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2週間でバークレーのフィールドワークを行い、Y-PLANのメソッドを経験した高校生たち。最後の1週間はいよいよ、自分たちの地元をテーマに、課題を発見してこれを解決し、健全で持続的なコミュニティを目指すアクションプランを策定する。ただ作るだけでなく、実際にそのプランを実行する、という意欲に燃える高校生たち。
地元である東北地方の現状をどのように見つめていて、どのように変革しようとしているのか。後編へ続く。
松村太郎(まつむらたろう)
ジャーナリスト・著者。米国カリフォルニア州バークレー在住。インターネット、雑誌等でモバイルを中心に、テクノロジーとワーク・ライフスタイルの関係性を追求している。慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)、ビジネス・ブレークスルー大学講師、コードアカデミー高等学校スーパーバイザー・副校長。ウェブサイトはこちら / Twitter @taromatsumura