さて、読者諸氏にとっておそらく最大の関心事であろう画質については、もはやあれこれ書くより、とにかく作例を見て判断していただきたい。ただひとつご注意を頂きたいのは、今回はレビュー記事という体裁上、JPEG撮影をおこなっているということ。顔の露出を優先した画で白い服の一部にトーンジャンプが見られたり、髪のハイライト部に偽色が出ていたりする画像があるが、これらはRAWで撮影→現像というプロセスを経ることで、抑えることができると思われる。

以下、作例での使用レンズはすべて「smc PENTAX-D FA645 55mmF2.8 AL[IF] SDM AW」。なお、焦点距離は35mm換算で43mm相当となる

1/200秒 f4.0 ISO100(原寸大画像を見る)

1/200秒 f4.0 ISO100(原寸大画像を見る)

1/60秒 f8.0 ISO100(原寸大画像を見る)

1/1000秒 f5.0 ISO200(原寸大画像を見る)

1/1000秒 f4.5 ISO200(原寸大画像を見る)

1/60秒 f4.0 ISO200(原寸大画像を見る)

1/60秒 f4.5 ISO1600(原寸大画像を見る)

1/60秒 f4.5 ISO1600(原寸大画像を見る)

1/125秒 f8.0 ISO100(原寸大画像を見る)

1/500秒 f2.8 ISO200(原寸大画像を見る)

1/250秒 f9.0 ISO200(原寸大画像を見る)

1/160秒 f9.0 ISO200(原寸大画像を見る)

1/125秒 f2.8 ISO200(原寸大画像を見る)

1/100秒 f5.0 ISO200(原寸大画像を見る)

1/80秒 f4.0 ISO100(原寸大画像を見る)

1/60秒 f13.0 ISO1600(原寸大画像を見る)

また、高感度撮影では、ISO12800でも実用に耐える画質を保持しているように思われた。

【上】高感度撮影時のノイズの出方。左からISO6400、12800、25600、51200、65535 【左】比較画像は、赤枠の部分を切り出したもの

最後に、動画撮影機能についても触れておこう。実はこの645Z、映像業界からも結構な引き合いがあるそうだ。映像業界では、今やビデオカメラではなく、フルサイズ一眼レフで動画撮影を行うことがもはや標準的なワークフローとなりつつある。であれば、さらに大型のセンサーと大型レンズのコンビネーションで、より高品質な動画を撮影したい、ということなのだろう。

以下の作例は、露出モード「Av」で絞りをf2.8、カスタムイメージを「クロスプロセス」にして撮影したもの。フレームレートは24Pで、映画的な雰囲気を作ってみた。

【動画】PENTAX 645Z 動画サンプル(Avモード 24P)

なお、撮影中のAFは動作しないので、シーンは決め打ちになる。また、作例のようにカメラをパンする場合は、クイックシフト・フォーカスでピントを追ってやる必要がある。音声は内蔵のステレオマイクでも収録できるが、できれば外付けのマイクを使用したい。純正品は用意されていないので、社外品を別途用意しよう。音声レベルは、簡易ながら調節機構がある。通常の動画撮影は4Kには対応せず、インターバル動画のみ4Kに対応する。

【左】動画撮影時の露出モード指定が可能。「Av」にすれば、被写界深度の浅い、雰囲気ある動画を撮影できる 【中】通常動画の記録サイズは「Full HD」と「HD」。タイミング的には4Kに対応して欲しかったが…… 【右】フレームレートは、30/S以下ならプログレッシブに対応。24Pでは映画のような雰囲気になる

35mmフルサイズセンサーの実に1.7倍という広大な受光面積と、PENTAX 645レンズの突出した表現力。それらが結実した高画質画像を35mm一眼レフ(K-3やK-5シリーズはAPS-C機だが、便宜上こう書く)そのままの感覚で手にできる。それが645Zの最大の魅力だろう。そして、その真の魅力は大判プリントでこそ発揮、結実されると思う。個展やグループ展を開催する写真愛好家は数多い。そんな方々には、ぜひ一度本機を手にとって、シャッターを切ってみていただきたい。

そこには、かつて645Dで感じた“もどかしさ”はすでにない。645Zの登場で、もはや中判デジタルはあまねく写真愛好家の選択肢に入ったことを実感するはずだ。

(モデル:津守祐芳、津守栞来、青木夕野)