本体写真を見てもお分かりいただけるとおり、操作系は実にすっきりとまとまっている。逆に言うとデジタルカメラとしては実にシンプルな作りで、中判だからどうの、プロスペックだからどうの、という小難しさは一切ない。それどころか、「PENTAX K-3」とほぼ共通の操作性なのだ。したがって、K-3ユーザーならマニュアルを見なくても使える。

【左】再生時の情報表示を好みのものに切り替えられる 【右】撮影情報を表示した状態

【左】色温度指定によるWBカスタマイズが可能 【右】RAW展開を含め、撮影後の編集などは、再生時に「十字キーの下」を押す

【左】編集機能も充実。ただし、このカメラのユーザーがこれをどこまで求めているか、やや疑問 【右】レンズ補正も充実。大きく絞った際、絞り羽根の裏側に光が回りこんで画質が低下する「回折現象」も補正できるようになった

【左】電子水準器は、ファインダーとライブビューの表示を設定できる 【右】画面右隅が電子水準器。左右と上下、2軸の傾斜に対応する

K-3やK-5シリーズ同様、PENTAX機の大きな魅力である画像キャッシュもそのまま搭載。最後にシャッターを切った画像がメモリにキャッシュされており、WBやカスタムイメージの変更をプレビューしながら選択できるのだ。しかも、「AE-L」ボタンを押すことで、RAWデータとして新規保存もできる。JPEGで撮影してしまったものの「あぁ、今のショットは当たりだった!」と思ったら、すかさずRAWで保存し直せるのである。これは全メーカーが標準搭載してほしいほど便利な機能だ。

【左】最後に撮影した画像をキャッシュするので、プレビューしながら画像を編集できる 【中】カスタムイメージの選択画面。それぞれパラメーターの微調整が可能 【右】最終撮影画像でプレビューしながらカスタムイメージを選択できる

【左】最終撮影画像はカスタムイメージを変更後、あらためて保存も可能 【中】キャッシュ内にある画像は、新規RAW保存も可能 【右】撮影前に「RAW」ボタンを押すと、次の1枚だけをRAW撮影することができる

特に、有効5,140万画素を誇る645Zのセンサーが出力する画像は、Lサイズで8,256×6,192ピクセル。その容量はJPEGでも1枚あたり20MB超、RAWデータでは80MBを超えることも珍しくない。カードの残容量やPCへの取り込みの手間や時間、画像保存などを考慮すると、できるだけ無駄玉を残したくないのが実情だ。したがって、この当たりだけをRAWで保存できるメリットはK-3以上に大きい。

多くの人が気になるAFについては、俊敏とは言えないまでも、十分に使える水準にあると感じた。ただ、27の測距点(中央25点はクロスタイプ)が広大な画面のほぼ中央付近に集まっているため、ファインダーを覗きながらピント重視の撮影をしようとすると、どうしても日の丸構図になりやすい。これは構造上やむを得ないところではあるが……。

撮影時、通常操作状態からフォーカスセレクトボタンを押すと、フォーカスポイント指定が可能になる

【左】「AF」ボタンを押しながらダイヤルを回すとフォーカスモードを変更できる 【右】フォーカスポイントの範囲もダイヤルで設定可能

構図の端に配置したモデルの目にピントを合わせる場合、AFエリアをやや広めに設定しておき、まずモデルの顔に合わせ、そこからクイックシフト・フォーカス(ピントリングを手で回してピントを追い込む、いわゆるフルタイム・マニュアルフォーカス)操作が有効だ。幸い645Zはファインダーが大きいので、マニュアルフォーカスも苦にならない。ただ、ファインダーの接眼部にまつげが当たって、少々見にくく感じることが多かった。付属のラバーアイカップを使うとかなり改善するので、ぜひ使用をおすすめしたい。

いっそ、ライブビューを使うという手もある。ライブビューなら顔認識も使えるし、チルト式の液晶モニターとも相まってアングルの幅も格段に広がる。ただし、フォーマットの関係上、それなりにミラーショックがあるので、しっかりホールドしていないとブレてしまう。35mm一眼レフと違って、ライブビューは基本的に三脚使用時に使うものと割り切ろう。