Google I/Oの事前予測記事の中でも紹介したが、当時のARTはパフォーマンスと互換性の両面で問題を抱えており、すべてのDalvik向けに書かれたコードがそのまま動作するわけではなかった。だが今回、Googleは主にパフォーマンス面でのDalvikに比べてのARTの優位性を前面に押しだしており、KitKat発表当時よりは大きく改善が進んでいる様子がうかがえる。またARTではガベージコレクション(GC)性能が格段に上昇している点も強くアピールしており、開発者が(アプリの一時的なパフォーマンス低下を招く) GCを特に意識せずとも利用できる点が強調されている。
ただし互換性部分はまだ問題があるようで、JNI (Java Native Interface)をはじめとする一部機能の動作が異なることで、既存のコードがそのままでは動作しないケースもあるという。特にARTで採用されたAOT (Ahead Of Time)コンパイラの性質により、Androidアプリはデバイスにインストールした時点で厳密なチェックが行われるため、互換性のないコードはそもそもデバイスでの実行を拒否されるようだ。"L"リリースのプレビュー版の紹介ページにも記述があるが、特に「JNIを使ってC/C++コードを呼び出すケース」「(クロスコンパイラなど)標準ではないコードを出力する開発ツールを用いた場合」「新しいGC動作に適合しないテクニックを用いた場合」の3つのケースを挙げている。
ARTのGCでは、GCのプロセスを走らせながらもメインのプロセスが並列動作して全体のパフォーマンスになるべく影響を与えないよう工夫が成されているなど、多くの点で改良が進められている。また現行バージョンには導入されていないものの、GC動作のコンパクト化がASOP (Android Open Source Project)で進められており、今後同機能の実装で相性の悪いテクニックがあり(オブジェクトフィールドへのポインタ保存など)、これらに留意するよう説明が行われている。