キー配列から読みとれるターゲットユーザーはビジネス~ライトユーザーか?
新しいThinkPad X1 Carbonで評価の分かれる点が、本製品から採用された独特なキーボード配列だ。IMEを切り替える「半角/全角」キーが「A」キーの左に、「BackSpace」キーの左に「Delete」キーが移動している。キーボードの配列に強いこだわりを持つ人ほど、X1 Carbonは"あり得ない"と第一印象だけで決めてしまうだろう。
しかし同時に、「左Ctrl」が大型化し左下に来たことで、操作性が向上した面もある。特にコピー&ペースト(Ctrl+C/Ctrl+V)などのショートカットキーを多用する人は、確実に使いやすくなったと感じる。
すでにおなじみともいえるアイソレーションキーボードだが、新しいThinkPad X1 Carbonでは配列が変化して、「半角/全角」「Delete」キーの配置に慣れる必要がある。また、最上部のファンクションキー列がないと違った感じに見える |
こうした変則配列は最初のうちはミスを連発するが、日常的に文章を打ち込む人ならやがて体が覚えてしまうので問題はない。筆者も「半角/全角」や「Delete」の暴発に悩まされたが、3日も使っていればそうそうミスはしなくなった。
キーもクリック感よりは軽快さを重視したセッティングであるため、文章をひたすらトットットッ……と打ち込むような作業をするなら、ドンピシャでハマるはずだ。
熟成が足りないAdaptiveキーボード
キー配列と同様に人を選びそうなのが物理ファンクションキーのかわりに最上段に配置された「Adaptiveキーボード」だ。最上段に横一列に仕込まれたタッチセンサーがファンクションキーやPrtScreen等の特殊キーとして働くが、最前面で開いているアプリや液晶の開閉状況で点灯するボタンが動的に変化するのだ。
例えばIEを起動している時は"戻る"や"再読み込み"ボタンが点灯するし、Skypeを起動すればマイク音量の調整やWebカメラ起動等のボタンが点灯する。また、一番左側の「Fn」キーが常時点灯しているが、これを押すことで好きな配列に切り替えもできる。
Adaptiveキーボードの設定の変更も可能だが、Fnキーをタッチした時の入れ替えの順番やアプリとの自動連係機能をオン・オフする程度のシンプルなカスタマイズしかできない。せめてアプリとモードの関連付けを自在に変更したり、どのモードでも液晶輝度調整をアクティブにするといったカスタマイズ機能が欲しいところだ。
このAdaptiveキーボードの問題点は、タッチ式なのでミスタッチが直感的に分からない点と、Fnキーでの切り替えが微妙ににぶいこと、さらにカスタマイズの幅が狭い点の3つ。特に日本語入力時に[F7]~[F10]を多用する人は、触覚フィードバックが得られない新しいThinkPad X1 Carbonはかなり使いにくく感じるだろう。
情報量は格段に増えたが少々クセが強い液晶
新しいThinkPad X1 Carbonの強化点といえるのが、2,560×1,440ドットのIPS液晶を採用していることだ。旧モデルは1,600×900ドットなので、等倍表示させた時の情報量は2.56倍に増えた計算になる。
もっとも、14インチ液晶で等倍表示させるとアイコンや文字が小さすぎるので実際はDPIスケーリングを上げて文字の解像感を上げる方向に使うことになる。いずれにせよ旧モデルよりも高品位なデスクトップ環境が得られるのだ。
しかし、新しいThinkPad X1 Carbonの液晶は高スペックな割に少々クセが強い。一番気になったのは視線の変化で、輝度が変化しやすいこととだ。TN液晶のように色化けする訳ではないが、特に頭を動かすと、視線から遠いサイドが普通のIPS液晶よりも暗くみえてしまう。さらに液晶の輝度調節機能が鋭敏なのか、自宅のようにやや照度を抑えた環境では液晶輝度最大でもバックライト輝度が上がらない。
今回、X-rite社製のキャリブレータ「i1 Display Pro」を用いて液晶の特性をチェックしたところ、輝度自動調整を外してようやく120カンデラまで上げることができた。生成されたiccプロファイルから色域を導出してみたところ、sRGBよりやや狭いことがわかった。写真のレタッチ等をするなら、別途外付けの液晶を用意した方が得策だ。