過去には、AT&TがT-Mobile買収を計画していたものの、ライバルらのロビー活動や当局者らによる最終判断で買収を断念しており、AT&Tの後ろ盾を失ったT-Mobileは独自の成長戦略を描き出さなければならなくなった。それがiPhoneの取り扱い開始や「Uncarrier」と呼ばれる従来の商習慣を崩した新しいユニークなサービス群であり、緩やかな減少を続けていたT-Mobileの業績を反転させるきっかけとなった。
だが、しょせん戦略的にはニッチなニーズを掴んだという状態に過ぎず、長期的な成長にはまた別の戦略が必要になるとみられる。おそらくは、T-Mobile自身もSprintとの合併による大手2社への対抗を裏で望んでおり、やはり最大のネックは「当局をどう説得できるか」という点に尽きる。孫氏やSprint幹部は、「買収による米国ユーザーにとってのメリット」をうまくアピールできなければならない。前述PBSでの「massive price war (if US regulators allow us)」というわけだ。
孫社長はワシントンDCで何をアピールする?
そして、この孫氏らが政府関係者らにアピールする場が間もなくやってくる。米Wall Street Journalによれば、米首都のワシントンDCにあるUS Chamber of Commerce (USCC)において3月11日(現地時間)、各方面の業界関係者や政府関係者らに対して直にプレゼンテーションを披露していく予定だという。T-Mobile買収における最大の障害が政府や業界関係者らの妨害にあることを認識しており、その中心部に自ら乗り込んでいく形となる。