大手2社対抗のためにT-Mobile買収を検討するのは、いくつかの理由がある。まず1つは、Sprint単体では大手2社の契約件数の半分に満たないこと、そして今後サービス展開を行ううえで十分な周波数帯が必要になるということだ。
米カリフォルニア州サンフランシスコ市内にあるSprintストア。マーケット通りを挟んでちょうど向かいの位置にT-Mobileストアがある。斜め向かいにはAT&Tストア、同じ通り沿いで1ブロック離れた場所にはVerizon Wirelessストアがあり、1つの交差点を挟んで米国4大キャリアがにらみ合っている激戦区だ |
前者については、端末調達や設備投資でもスケールメリットが出しやすく、サービス地域拡大でも相互補完が期待でき、なによりユーザー数に裏打ちされた安心感がある。
後者については、周波数帯が確保できれば確保できるほど、通信の安定性やカバーエリアで有利となる。特にLTE参入についてはSprintとT-Mobileは最大手のVerizon Wirelessに2年近い遅れがあり、カバーエリア面で不利だ。両者のカバーエリアをうまく調整することで、スムーズな3GからLTE(もしくはTD-LTE)への移行が可能になる。もっとも、仮に買収が成功しても既存の周波数帯の一部は手放さなければならず、完全に「1+1=2」にはならないのだが、追いかける側の武器としては必要十分だろう。
だが、SprintによるT-Mobile買収における最大のハードルはFCCやFTCなど買収判断を行う当局やライバル2社による妨害だ。ライバル2社にとっては、強力なライバルが出現することはなんとしても避けたいところだろう。
特にSprintがT-Mobileを吸収することでポストペイド契約数では一気に2社に迫る水準にまで達するため、「海外企業に米国携帯市場を乗っ取られる」「競争面でわれわれが不利になる」といった理由をつけてロビー活動を展開することだろう。買収の可否を判断する政府関係者らの判断ポイントは第1に「買収がユーザーの利益になるか」という点にあり、次に競合各社らの主張を精査することになるとみられる。