Appleのブランディングと低価格iPhone

最後に、いわゆる「低価格iPhone」についての話題に触れて締めたい。オブラートに包まずにいえば、昨秋にリリースされた「iPhone 5c」は「低コスト」と「ファッショナブル性」を両立させるべく開発されたもので、一定層からはそれなりの人気を獲得することができたと考えている。

一方で、「旧モデルと同仕様の製品をさらに低コストで製造」という狙いが同製品にはあったと筆者は考えている。金属シャーシは材料や削り出しコストが高く、量産もポリカーボのものに比べると難易度が高い。そのため、従来のように「旧モデルを廉価版として売る」のではなく、より低コストでファッション性もプラスする形で売り、「利幅の拡大」と「カラーバリエーション拡充による新規層開拓」を考えたのがiPhone 5cではないかと思っている。結果、後者については受け入れられたものの、前者については思惑が外れたのではないかというのが筆者の意見だ。

まず、iPhone 5cとiPhone 5sはフルプライスで100ドル程度しか差がなく、しかもiPhone 5からコストダウンされただけの製品が前面に出てくることに関して抵抗を覚えた消費者も少なくないはずだ。日本のようにiPhone 5sでさえ実質0円販売されている国ではiPhone 5cの意義は薄く、逆に主なターゲットとして検討していたと思われる新興国代表の中国市場では、iPhoneの存在そのものを「ステータス」として考える傾向があり、購買層が誰もiPhone 5cの存在を望んでいなかったことも指摘されている。

つまりユーザーが望んでいるのは「高級品のiPhone」であり、廉価版ではなかったという話だ。もっとも、Xiaomiのように低価格ながら適度な高性能の製品が大いに受ける土壌もあるわけで、おそらくはAppleがブランディングを間違えたというのが実際だろう。こうした大衆層に訴求するには「iPhone」という名前が邪魔だったのと、廉価版としては「高すぎる」のがネックだったのだと考える。